家での作業は、一日中家に居て地味な時間が延々続く。
今日はダンボに付き合ってもらって、長めの散歩に出ることにした。
草野球のグラウンドを横目に小さい公園を通り過ぎる。
車が通れない真っ直ぐの道を行くと、しばらくするとバス通りに出る。
昔から自転車で探検をするにしても、なんでもない住宅街の中を行くのが好きだった。花壇に花が植えてあったり、なんてことのない門灯やガレージに可愛い三輪車が置いてあったりして、そういうのを見つけるととても楽しい気分になるのだ。
散歩猫が犬をお供にして、今日は日が暮れるまで行けるところまで行こう。
窓辺に掛かるカーテン。新しく建った家。マンションの自転車置き場。小学校のフェンスが続いて、足が止まったのは習い事教室だった。普通の家をちょこっと改築した住宅街の中にある習い事の教室。ここはピアノも絵画も習字もやっていて、どうやら場所を提供しているだけみたいだったが、それでも私が通っていた習字教室に似た懐かしい匂いのする教室だった。
ダンボを見ると、”家に帰りたいのを我慢してもう随分になる”といった不服な歩き方になっていた。
ここ、どこだろうね。
ダンボの信用を失い、無視をされた状態・・・。
場所がわかった時には、駅の近くに居たのだった。
あれまー。
こんな所まで来てしまった。
いつもはバスで来る辺り、
だったらついでに買い物でもして帰ろう。
と、思ったのだったが・・・。
”ワンちゃん、お断り”
”ペットを連れての入店はご遠慮ください”
どこもかしこもペットはダメ。
そりゃそうだ。
散歩猫は人間に戻ったが、ダンボはどこから見ても子ブタ犬。お前はどうやらどこの店にも入れてはもらえないようだよ。
日は暮れはじめると一気に夜へと変わっていく。少し春のようだった空気が、ひゅるると冷たい風に変わるのには時間はかからなかった。
寒い。
冷たい。
座りたい。
私もここまで来れたところまではよかったが、帰りの体力を計算するのをすっかり忘れていた。
すっかり日が暮れて、辺りは夜になり。
民家の石垣に腰を掛ける。
ダンボは震えながら私を恨みの目で見ていた。あきらかに私に対して怒っていて、その目は「配分ミスだろう」と言っていたのだった。
はい、そうでござんす。
すみません。
”行きはよいよい、帰りはきつい〜。”
自転車での探検も、そう言えば帰りのことを考えずよく失敗をしていた。行きは楽しい探検、帰りは厳しい耐寒遠足・・・、気分転換だったはずではなかったのか。
遠かった。
修行に変わった本日の散歩であった。