投稿日:2010年06月01日

2010年06月01日

今日は父の誕生日。プレゼントを送っていなかったので、連絡だけでもと思って電話をかけた。
「もしもし、あ。お父さん?」
「へい。なんや」
電話の向こうでテレビが流れている。この間電話をした時も、「今テレビ、見とんねん」で通話時間が5秒ぐらいだった。テレビを見ている時は電話が短いのだ。私がセールスの電話を断る時の通話時間より短い時があって、電話を切ったあとに、「父親って娘が好きなはずなんだけどなぁ」と不思議気分に包まれる時があるのだ。
「お誕生日、おめでとうございます」
父は今朝目覚めた時に、自分の誕生日であることを覚えていたんだろう。
「ワシが何歳になったんか、あんたは知ってんのか」
テストを出してきた。
父は昭和3年生まれ。82歳か83歳になったんだと思うが咄嗟に計算が出来なくて、「えっと、82歳か83歳です」と答えたのだが・・・・
父にとっては82歳も83歳も同じなようで、当たりともはずれとも言われずにその会話は答えを教えてもらえないまま唐突に終わったのだった。
「今日な」
父はまた別の話がしたいらしい。
「近所のコーエンに行ってきてん」
近所のコーエンとは日用雑貨などを売っている国道沿いの店なのだが、そこに父は行ったらしい。
「スクラッチくじ、買ったら」
「700円儲ってん!」
最後の方で当たりが出たらしく、全然当たらない状況で最後にポロっと当たりが続いたという頃合いがよかったせいかエラく上機嫌だった。
「誕生日に当たったわ」
勝ったと言っても2000円分のくじを買って、2700円になったというささやかな勝ちだったのだが、吉野家の牛丼を二杯私が父におごるより、スクラッチくじで700円勝った方が喜びは大きいのだなと思った。
私の財布にもスクラッチくじの当たり券が入っている。こちらは700円なので、私は負けで親子で計算をすれば負けているのだが、今日はめでたい日なので余計なことは言わずにおいた。
しかし長いこと私も父を見てきたが、700円の勝ちであんなに喜ぶような父ではない。
親子でスクラッチくじにハマっているとは知らなかった。
<当たってよかったね>
父も相当いつも当たっていないんだなということが感じられたのであった。


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