去年の7月に花をつけてから、キッチンの窓辺ではセントポーリアの一鉢がずっと絶やすことなく花を咲かせている。
キッチンに立つと、私は必ずこの鉢に目をやっている。
ということは、丸一年、「今日も咲いているわ」と窓辺の方を見て思い続けてきたことになるのだ。
知り合いのご婦人に小さな苗を頂いてから2年弱。ようやく花を咲かせてくれた遅咲きの鉢。もう咲かないのかもしれないなと半分あきらめつつも、それでもいつか咲いてくれたらと眺めていた花だった。
今年の一月、葉差しをしてみた。
ご婦人が私にくれた時の苗は、葉差しをしてそこから芽が出たものだったからだ。
葉差しは初めて。こんなので上手く芽が出てくれるんだろうかと半信半疑で、葉を差したポットを鉢の隣りに並べて置いた。
ゴールデンウィークの少し前の頃のことだった。小指の爪程の大きさの葉っぱがある朝土から顔を出したのを見つけたのは。
いつも窓辺で淡々と咲いているセントポーリア。
花が咲いても特に華やかさが醸し出されるわけでもなく、咲かなかった頃と見映えはそれほど大きくは変わらない。
「私のほうを見て!」と鮮やかな色で目を引くこともなく、「私に気づいて!」と甘い香りで呼ぶこともなく。一週間に一度水をやるだけで、あとはこっちが何かをする必要もない。
淡々と。
私はこの花の”ブレないところ”が好き。
長い時間をかけて、ようやくその良さが見える。
短い期間じゃ判断が出来ない長所ってものがある。
<こんな人っているなぁ。>
自分にとって、いつの間にか特別な存在になっていくものと、いつの間にか特別な存在になっていく人は、きっとタイプが似ている。
毎日、キッチンの流しの前に立つとふと目をやっている。
私も心を伝えるのには長く時間がかかる方。
あなたからは、私はどんな風に見える?
なにも答えてはくれないけれど。
蛇口からの水の温度を感じながら。
目が合えば嬉しい、セントポーリア。