夕方、ダンボを連れて川ベリの道を散歩した。
ダンボは、
「ちっちゃい〜。可愛い〜」
と、言ってもらったり
「おっきいですね〜。チワワ?」
と、言ってもらったりする。
ちっちゃいんだって。
おっきいんだって。
面白いね。
普段はあまり川べりの方には行かない。
ダンボが風の音をとても怖がるからだ。
ヒューと音がするとビックリして一人で猛ダッシュで逃げる。何度か驚いているうちにリードに足を絡ませて一人でギャン!と言って転ぶ。そして一人で転んでおいて私の顔を恨みの目で見るのだ。
行動が速すぎて、私もどうしていいのかわからない。
散歩嫌いになって欲しくないので、風の音がたくさんする川べりにはあまり行かないようにしていたのだった。
でもね。ダンボ。
もうすぐこの辺りも景色が春に変わるんだよ。せっかく近くに住んでいるのだから、どう変わるか一番寂しい裸の木の時から見ておこうよ。
尻尾をお尻の下に隠したダンボと川べりを行く。
風が「ひゅ〜〜っ」。
”こわい〜〜っ”
枯れ葉が「カサカサ〜〜っ」。
”こわい〜〜っ”
お前のように落ち着きのない犬は見たことがない。
私の目線の少し上には桜の木。雪柳が白い花を咲かせるのは3月、今日は梅のつぼみが膨らんでいた。
「見てごらんよ」
何度も誘ったが、ダンボは見えない敵と戦うことに全てを賭けている様子だった。
もうすぐ4歳になるダンボ。
お花には興味がないかな。
待っていますよ。春を。
緑道に夕方の太陽の光が差し、空には昼間の青空が広がっていた。
立ち止まって、少しあごを上げて景色を見る時は、
私の心が穏やかな時。
街灯と、私と、ダンボと。
もっと遠くまで行きたいね。
今度はあっちの方まで。
指さすように、川ベリの道に3つの影が長く伸びていた。