最寄りの郵便局のガードマンの初老の男性と、チョイノリのご縁で顔見知りになった。
おじいさんは個人的にチョイノリに興味がある様子で、行く度に乗り心地を聞かれたり、チョイノリに関する質問やおじいさんの持っている知識を聞いたりと、私にとっては今チョイノリ談議が出来る一番の相手になったのだ。
「それは、乗り心地はいいのかい」
「今日は風が強いから気をつけて」
「自転車がわりに便利そうだねぇ」
一見おじいさんは、「チョイノリ」を知っているような雰囲気の風貌ではない。車の運転だって木の葉マークをつけて走らないといけないような、「ザ・老人」だが、会話をしていると、どうもおじいさんが”自分が乗るのに欲しい”様子なのだった。
その郵便局にチョイノリでやって来る私は唯一のお客なのかもしれない。
生チョイノリを見て、おじいさんはもっとチョイノリが欲しくなってしまったのだろうか。
おじいさんは、仕事を終えて家に戻る。
夕飯の時に、ばあさんにもう一度話を持ちかけてみる。
「なぁ、ばあさん。」
「もう車は乗らんから。」
「そのかわりに小さいバイクを買うてはどうかと思うんだが」
ばあさんは、答える。
「だから、あなた」
「何度言ったらわかるんですか。」
「だめだと言ったらだめですよ。」
「転んだら骨を折って即入院」
「どうするつもりなんですか」
「史朗にも聞いてごらんなさい。だめってみんな言うに決まってるんですから」
そこで、じいさんはたまに郵便局にやって来る私の話を引き合いに出すのだった。
「でもなぁ、ワシが行っとる郵便局に来る女の子が便利ですよって言うとったんだよ」
「その子は足が悪いんか、杖をついとってな」
「ワシの方が元気だよ」
「たぶんあの子の方がどんくさい」
「自転車だと、やっぱり坂がキツいんじゃ」
「便利だと思うんじゃが」
「だめかのう」
勝手に買わずにばあさんのお許しをもらおうとする健気なおじいさん・・・・。
そんな風に今までおじいさんのことを思っていたのだが・・・・、
今日の会話でそれはなくなった。
「チョイノリ、実はそれほど売れなかったんだよねぇ」
「え!」
・・・・・。
おじいさん、貴方は何者なのだ。
前の仕事はバイク関係、今も休日はハーレーを乗り回しているベテランライダーなのかもしれないのであった。