東の窓から見える草野球場は、真夏日になってからも毎日大人や子供達が試合をしに来ている。
「こんなに日差しが強いのに、野球なんかやって大丈夫なの?」と、他人のことながら少し心配になるのだが、このグラウンドには年明け早々から野球をしに人がやって来ていた。お正月以外にも、師走の慌ただしい時期や真冬の寒い時期、一年を通してこのグラウンドにシーズンオフはなく、いつも誰かしらが野球をしているのだった。
ここに来る人達はみんな、野球が好きなのだ。
大きな杉の木は年中緑色だが、芝生の色が季節で随分変わる。私は野球場の景色を見て四季の移り変わりを感じている。芝生は冬は枯れた茶色をしていて、霜が降りる日は白く氷が張ったように見えて薄く霧がかかっていることもある。夏は鮮やかな緑になり、たまに芝刈り機で職員さんに散髪をされている。
夕方、犬と一緒にグルっと周りを歩くとユニフォームがどろんこになった子供達の姿を多く見る。
おかあさんは洗濯が大変だ。
ここのグラウンドからは、通常でも声が聞こえる距離に私の部屋はあるが、時々風に乗った声がうんと近くで聞こえる時があって、「山本さん」などの短いセンテンスだけが切り取られて風で運ばれて来ることもある。
「カキーン」と音がする。
青空に白球。
今のはホームランの音かな。
こんな暑い日にもやりたい好きなことがあるのが、何よりいいなと思う。
もうすぐ蝉の声がするよ。
東側の窓から見える景色は心地いい。
ここが私の四季の窓だ。