バイクで近所のパン屋さんに向かう途中でのこと。
信号待ちをしていたら、目の前の横断歩道を男性が走って渡って行った。
ここの角には人気のテイクアウトの焼き鳥店があって、お弁当も出しているみたいなのだ。男性はここでお弁当を買ったのだろう。急いで通りを渡った所に停めてある車に戻ろうと渡ったのだったが・・・・。
男性が走った後から遅れてヒラっと何かが舞い上がった。
そして横断歩道に落ちた。
何だろうと目を凝らしてみると、どうもそれはお弁当と一緒に袋に入れてあった割り箸のようだった。
あっ。
お箸。
既に男性は向かいに停めてあった車のドアを開けて乗り込もうとしていた。車はゴミ収集車で、助手席には仲間の男性が座って待っていて、すぐにでも発車するところだった。
どうしよう。
お箸。
落としたのに男性は気がついていない。
きっとこのあと車の中で昼食をとるのだろう。もう一人の男性は車の中で待っていたので、お箸を落とした本人が「俺はあそこの弁当を買うわ」という流れだったのだと思う。
今叫んだら声が届くかな。
信号待ちの車が他にも停まっているので、ちょっと自信がなかった。
どうしよう。
どうしよう。
さぁ、お昼だと広げた時にきっと男性はお箸がないのに気づいて困るだろう。せっかく好きなお弁当屋さんで買ったのに・・・。
信号が変わった。
信号待ちをしていた車が動きだし・・・。
あぁ、どうしよう・・・。
結局そのまま私も走り出してしまった。
ちょっと胸が痛かった。
横断歩道の所に来て確認すると、やはり割り箸だった。
見知らぬ男性よ、ごめんね。
あの時、大声を出して知らせるということにちょっとためらってしまった。もしも聞こえなかったら恥ずかしいし・・・そんな風に消極的な気持ちが勝った。
パンを買った帰り道、もう一度横断歩道に目をやるとまだお箸は落ちた場所にそのまま残っていた。
聞こえなくても叫べばよかったのに。
いい仲間にお箸を貸してもらって下さい。
メリークリスマス。
そしてあの男性に何か他のことでいいことが起こりますように。