日別アーカイブ : 2012年6月10日

投稿日:2012年06月10日

2012年06月10日

仕事で毎週行くビルのエレベーターの中に、少し前から気になる落書きがあるのだ。
それは行き先階や開閉ボタンのあるパネルの上の所にあって、多分ボールペンだと思う。何てことのない普通の「かばん」の絵が書きかけのまま終わっている落書きなのだった。
一見、筆圧が強くガリガリと力を入れて描いたようなのだが、かばんの輪郭を描いただけでしかも申し訳ないのだが、その絵が私が描くかばんの絵ぐらい下手なのが謎なのである。
なんでこんな絵を描いたのだろう。
しかも何故題材が「かばん」?
途中でやめた理由は、誰かが乗って来るかもしれないという焦りからだったのだろうが、ここに筆を下ろそうとしたそもそもの理由が見えないので、エレベーターに乗る度に私はこの絵を見つめ、推理し、相変わらず謎が解けずにいる。
ここはデザイン事務所なども入っているビル。出入りしている人達は割と今っぽいお洒落な雰囲気の人が多いのだ。きっとデザイン事務所の人だって見ているだろう。
下手すぎてとにかくイライラする。
誰も消さないので、私が消してみようかしら。
そうして、ある日。
「ちょっと試しにやってみようかしら」と、ゴシゴシと消している時に限って誰かが乗って来て、慌てて消すのをやめた私の姿を見てその人は私が落書きの犯人だと思うのだ。
描いたのは誰だ。
エレベーターの中にかばんの絵はいらない。
私が犯人だと噂される前に、自ら消しに来ていただきたいのである。