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投稿日:2008年01月10日

2008年01月10日

ポストの中を見ると、文通友達のKさんに出した手紙が受取人不明で戻ってきていた。
Kさんは90歳という高齢なので、お元気なのだが東京都下の完全看護の病院に入院されている。
転院されたのか、ご自宅に戻られたのか。でもつい先日この住所の病院からKさんからもらったばかりだったのだ。
どうして戻ってきたのかな。
何気なく手紙を裏返してみると・・・
封筒の裏側に「成田国際空港支店」とハンコが押されてある。そしてその横には中国語で何か書いてあるシールが貼ってあった。シールには中国の地名らしき箇所に赤いペンでチェックが入れられていて、それでこの手紙が中国に渡って受取人が見つからずに戻ってきたことがわかったのだった。
中国。
中国に行って戻ってきたの?
信じられない。この住所宛てにはもう何度も手紙を送っている。7桁の郵便番号も書いていて、いつも通りに出した手紙だったのだ。こんな住所が中国にあるのかなと思ったが、それなら「大門」という箇所が中国風に見えたのだろう。それにしても、手にした郵便局員さんの誰にも気付かれずに戻されるとは・・・。
長旅で少し薄汚れてしまったバンビのイラストの封筒を手にして、「お前は中国に行ってきたのかい」と心の中で話し掛けた。
「よく帰ってきたね」
それでもまた自分の手元に帰ってきてくれたことは嬉しかった。
いつ送った手紙だったろう。クリスマスが終わって出したものかその前のだったか。何を書いたのか、他愛のない内容だったとは思うが、それももうハッキリと思い出せない。
口をしっかりと閉じて、私にも中の秘密を教えない手紙。もうきっと内容も古くなってしまっただろうから、捨ててしまおうかと思ったが、ノリでピッチリひっついて少しよれた封筒を眺めていたら、手紙の行方を自分が決めてはいけない気がした。
「内容が古くなっていると思うんですけれど、このまま同封しますね」
結局、いきさつを書いて、戻ってきた手紙を入れてKさん宛てに新しく手紙を出すことにしたのだった。
中国のどこを探してもKさんは居なかった。
私の書いたこの手紙を読んで、その内容が理解できるKさんは世界中を探してもやっぱり他には居なくて、それがなんてことのない手紙だったとしても、この迷子の手紙は、手紙というものが、唯一の人間と唯一の人間をつなぐ存在なのだということを考えさせてくれた。
ポストの前まで行って、投函する時、
<今度はなるべく早く届いてちょうだいね。>
今日は神社でお詣りをしているような気持ちになった。
<タイムカプセルみたいだなぁ。>
先月のことだったのに。
遠い日のように思えてくる。
2007年の私がポストの奥でコトンと音を立てた。