投稿日:2010年10月04日

2010年10月04日

外科病棟は内科と違って入退院の人の入れ替わりが早いのだ。今日も退院さんと入院さんが多いみたいで、廊下では慌ただしく人が行き来をしていた。
「じゃぁ、お部屋を移動しましょうか」
おしゃべり部屋に私は今日から行くのである。せめて親分格の人が居なくなっていますように・・・。そう願いながら部屋に案内をされると・・・・。
あら?
静かじゃない?
この部屋は今日転院と転科で二人が出て行ったらしく、入り口の患者さんは眠っていて奥の患者さんは丁度留守。あんなにしょっちゅう大声が響いていたおしゃべり部屋はシンと静まり返っていたのだった。
<うそ!?嬉しい!>
メンバーが変われば部屋の空気は変わる。これでこの部屋はおしゃべり部屋ではなくなるんだという期待で昨夜の憂鬱が一気に消えたのだった。
しかし、それは甘い考えに過ぎなかった。
「あら・・・アタシ、寝てたみたいだわ」
入り口の患者さんが目を覚ました。そしてしばらくすると奥の患者さんが部屋に戻ってきた。部屋の住人の入れ替わりは、学校の転出転入に似ている。私は新しくこの部屋に来た転校生。早速興味津々に今までの流れや病歴を尋ねられることとなったのだった。
「昨日まではねぇ、すっごくにぎやかな部屋だったのよ〜」
「すんごい盛り上がって楽しかったわ〜」
二人のご婦人が言うには、ボス格の人間が居たらしい。いつも面白いことを言って、歌を歌ったり話の途絶えない人だったと言っていて、もう一人は90代のおばあちゃんが居てこちらはいつもおとなしいおばあちゃんだったのだそうだ。
ボスが居なくなったら流れがかわると思ったのだが、この二人のご婦人は宴会場となっていた病室に慣れてしまったらしく、ボスの居た頃の空気を今度は二人で担う形になってしまったようだった。私のあとに新しい入院さんが入ってきて、その人も会話に参加をするためおしゃべり部屋はパワーが落ちるどころか、私が確認しただけで14時〜19時半までノンストップで大声で話し続けて本当にうんざりしたのだ。
歩く練習に出たまま、私はデイルームという面会室みたいなところに避難するようになった。
私のベッドの場所に来る患者さんはみんな静かな人なのだそうだ。そう二人は言っていた。いいや、それが普通なんです。本当は。
一人ずつだといい人なのに、集まるとタチの悪くなる人って居る。特に60代のご婦人にこういうタイプは多く、過去の入院でも「勘弁してくださいよぉ〜」的なことはあったのだ。
病室が宴会場になっている。
でも転校生には、それらを覆せる力はないのである。


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