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投稿日:2009年07月31日

2009年07月31日

あらまぁ。
せみのぬけがらを見つけた。
割と家から近いお宅のポストの少し下のところ、門にキャラメルコーンのようなせみのぬけがらがひっついていた。
ここのお家の敷地の土の深い所で、ずっとこの蝉は幼虫時代を送ってきたのだろう。そうして地面を這い出して家人も知らないうちに蝉になって、どこかに飛んで行ったのだ。
「おとうさん、おかあさん。」
「今までお世話になりました。」
「よかったら記念にどうぞ。」
多分、このぬけがらの主は娘さんの蝉だったのだろう。夏休みの宿題の何かに役立ててもらえたらと、こんなにわかるような所にぬけがらを脱いでいった。
蝉って蝉になって飛んで行くのだと思っていた。
蝉もお嫁に行くんだね。
蝉は今朝お嫁さんになって飛んで行った。
幸せになってね。
ぬけがらにそうつぶやいたのだった。


投稿日:2009年07月30日

2009年07月30日

リハーサルで信濃町にあるマックスタジオへ行った。
信濃町は、ソニーの信濃町スタジオでレコーディングをよくしていたので、いろいろと思い出がある場所だ。もうその信濃町スタジオもなくなって、前を通ることもなかったが、マックスタジオがこの前の道を通って行くので、久しぶりにあの建物の前を通ったのだ。
もしかしたら、取り壊されて全く別の何かが建っているのかなと思ったが、建物は当時のままだったように思う。チラっと見ただけだったが今は別の会社か何かが入っていた。
当時はレコーディングもでっかいミキサーで作業をしていて、サイドにはアシスタントエンジニアさんが居て、20代前半と思われるこのアシスタントエンジニアさんは、私が見る人達の中で飛び抜けてと言っていい程「職人さん」に見えたものだった。定位置に座り微動だにせずに黙々とお仕事をする。顔色一つ変えず、あくび一つせず、トイレにも行かずに昼から明け方まで、緊張感のある作業をミスなくやってしまう。ゴルゴ13みたいだった。
あの頃、お世話になった方々はどうされているだろう。
明け方までレコーディングをするということが、よくあったなぁ。
スタインウエイがいい音をしていた。
スタジオの非常口みたいな所から神宮の花火大会が見えて、感動したっけ。
マスタリングルームでは、「これがアメリカ製のケーブルね」「次はスイス製」とケーブルをかえて聴かされて「どっちの音の方が好み?」と聞かれても、違いがわからなかったなぁ。
私も・・・・。
続けていますよ、音楽を。
今は「売れる」「売れない」というだけでないものさしを、持てるようになった。
もう今はない信濃町スタジオ。
通ってきた全ての音楽の道のりに感謝を込めて、ふと吹いた懐かしい風を見送っていた。


投稿日:2009年07月29日

2009年07月29日

夜の高円寺は、私が中野に住んでいた頃と景色が変わったように思う。路上に椅子を出している店が増え、屋台村のような景観となり、そこに平日でも朝方まで人が結構飲んでいる。渋谷も日々「今日は何かのお祭りですか?」のような景色だが、高円寺も毎日「今日は何かお祭りでもあったんですか?」のような、謎の盛り上がりに包まれるようになった。
高円寺は道も店に含む。
ようになった。
だから、道を歩いていると食べ物の匂いだけでなく、煙がもうもうとしていて、ふと「日本ってこんな国だったっけ」と思ったりもするのだ。
朝まで屋台村の高円寺からバイクで10分。
夜の7時になると、もうシーンと静かな夜を迎えるのが家の辺りなのだ。
なのだが、家の近くにも謎エリアがあるのだった。
最初、そこはお店なのかなと思っていた。
うどん屋さんかそば屋さんのような店構えで、だが看板が出ているわけでなく、普段は物が無造作に積んである。どうも上が建設会社の寮のようで、たまに1階部分で草野球チームの打ち上げのようなものををやっているみたいで、一般のお客さんが入るような店ではないことはわかったのだった。
しかし、その店っぽいところは、この3年でも少しずつ増築をしている様子。見た感じ割と立派な大きさの店になっていたのだ。
そうして、この店もついに最近道に椅子を出して休みの度にバーベキューをやるようになったので、散歩で前を通ると焼き肉の匂いや煙が道いっぱいに広がっているのだった。
道に座っている人は、堂々としていて、前を歩く方がコソコソしているようにも思う。
そのうちにベッドが置かれ、人がゴロンとくつろぐようになるんだろうか。
”前を失礼いたしまぁ〜〜す”
私の生活圏では今、少しずつ道が道でなくなってきているのである。


投稿日:2009年07月28日

2009年07月28日

藤原美穂ちゃんのレコーディング。
美穂ちゃんとはjamforjoyというイベントで出会って13年ぐらいになる。その間に一緒にライブをやったり、CMのレコーディングで自分が呼んでもらったり、私のレコーディングでは美穂ちゃんに歌ってもらったりと、いろいろご一緒させてもらっているのだ。
だが、厳密に言えば私が美穂ちゃんと出会ったのは私がまだ女子大生だった頃のこと。随分昔にさかのぼる。
ある日、すごくかっこいいバンドが出るからと先輩に連れていってもらったライブハウスで観たchocolate lips。そのバンドのボーカルが美穂ちゃんだったのだ。当時京都にはビッグバンというライブハウスがあって、たまに東京からツアーで来るプロのバンドがここで演奏をしていたのだが、ライブスケジュールにfrom tokyoと書かれたバンドは、演奏も人も洗練されていて、気軽に近寄れないオーラを放っていて別世界の人達に思えていた。
美穂ちゃんのバンドは両サイドが黒人ミュージシャンというスタイルで、当時他では見ない編成。その真ん中で歌っていたのが美穂ちゃんだった。ファンキーでかつポップ、小柄なのに美穂ちゃんは歌がめちゃくちゃ上手くてキレがよかった。そのライブですっかりファンになってアルバムを買い、また京都にライブに来てくれないかなぁと次のライブとアルバムを楽しみに待っていたファンの一人になったのだった。
それから時が流れてjam for joyの顔合わせの時に「もしや、あの時の・・・」と思い切って声をかけたのが、あれ以来の美穂ちゃんとの再会で、今でもあの日に観たライブの感動は忘れられずよく口にしている。
2ヶ月程前に、美穂ちゃんが自分のレコーディングをしていて、一曲弾いて欲しい曲があると声を掛けてもらっていた。
美穂ちゃんの中でいろいろ思うところがあって、この曲は私のピアノで録音したいと言ってもらったのが、何より嬉しかった。
「この人にこれをお願いしたい。」「この曲を頼みたい。」ってとても大きい。世の中に演奏者は沢山いる。例えば現場によっては、「この人のスケジュールがダメだったらこの人」といった風に簡単に、予定だけで人が変わってしまうこともある。それもいろいろな関係で必要にもなってくることを理解しつつも、「この人ありき」と声を掛けられたら、やっぱり心から嬉しく思うものなのだ。
七色の声を持つ美穂ちゃんは、歌えない歌がないというボーカリストで、音感リズム含めて技術も超一流。
ずっと昔にライブハウスで観たあの人だったんだよなぁ・・・・。
人生の思わぬ交差が織物のようにつむがれていく。
今の年齢になって得られる喜びってこういうことなのだ。
一緒に音楽が出来る喜びを音に託したいと思いながら、今日はピアノの前に座ったのだった。


投稿日:2009年07月27日

2009年07月27日

夜、ダンボと散歩に出掛けようと玄関を出たら、でっかいゴキブリが玄関の前にやってきていた。
5月の末に家の中と外周を徹底的に駆除対策をしてもらったのに、こんなに丸々と太ったゴキブリがまたどこかから現れるだなんて。
去年の夏もこのように夜になると家の前の敷地をゴキブリが俳かいしていて、気持ちが悪かった。今年はそれからも解放されると思っていたのに・・・・。
「ただいま〜」
私が”ゴキジェットを取りに行かなくちゃ”と思っている間にゴキブリは敷地内に進んでバイク置き場の方へと消えて行った。
どんより。
ゴキブリを見ると、全てのヤル気が失せてしまう。
玄関を一歩出たところで、ゴキブリを見つけたので、今日の散歩は玄関一歩分で終わり。「ダンボ、お散歩もうやめようね」とそのまままた家に入って首輪を外して今日の散歩はこれで終わりとなったのだった。
ダンボは、例え家の前の10メートルでもちょこっと歩いただけで「散歩をした」という認識をして、家に入ると散歩をした後の同じ行動を取るのだが、さすがに今日は家に戻った時に変な顔をしていた。
<散歩に行くと言っていたけれど、散歩に行かなかったよね>
といった腑に落ちない様子・・・・。
ごめんよ、ダンボ。
複雑な事情で、今日のお散歩はなくなりました。
「ゴキブリが居て怖くなったから、飼い主が外に出る気力をなくした」ということは、犬には難易度が高くて伝わらないのであった。


投稿日:2009年07月26日

2009年07月26日

久しぶりに夕飯を一緒に食べようと、山口晶くんと池袋で待ち合わせの約束をした。
池袋は、私の家からだと乗り換えが必ずある。
私は基本的に電車があんまり好きじゃない。というか、ホームに上がったり下りたり、改札を出たらまた上がったり下りたり・・・・上がってすぐに下りてまた上がって下りて・・・というのが、なんか嫌なのだ。乗り換えはそれが増えるということ。それが嫌でバイクで行く場所というのがあって、池袋は微妙に「どっちにしようか」と悩む距離にある。
よし、今日はバイクで行こう。
パソコンでまず池袋周辺のバイク置き場を探す。地図を見るのは割と好きなのだが、家から池袋までの道順がなかなか覚えられないので、いつものように取り合えず出て「なんとなく行ってみる」ことにしたのだった。
なんとなくあっちの方。
東西南北の方向とざっくりした目的地だけを頭に出掛けるのだが、だいたい8割の確率で道を間違える。間違えるのも見越しているので、いつものように間違えつつ・・・・。
あらら。
またこの道に出ちゃったわ。
そんな時は電信柱にある町名を見る。
区と町名を頼りに自分がどれだけ間違ったかだけはわかる。
「と、いうことは、あっちの方か」
右斜め前の方にサンシャイン60らしき高いビルを発見。東京の場合、山がないのでビルを道しるべにするとよい。そのあとは「多分、この車は池袋に行こうとしている!」車先生を見つけて、ひたすらついて行く。こうして普通のお宅までついて行くこともあるが、時々本当に行けるので素晴らしい。
今日もそれで池袋に行けた。
地下駐車場からビルの地下街に上がった所で方向を失い、ここはどこなのでしょうかと人に尋ねたが無事に待ち合せ場所に着いたのだ。
全ての目的地は「なんとなくあっちの方」にある。
上がったり下りたりするより、ネコ気分で出掛けるのが楽しいのである。


投稿日:2009年07月25日

2009年07月25日

高円寺jirokichiにて植田くんのバンド、「tokyo smooth」のライブに参加する。
私は今回で2回目の参加になるが、tokyo smoothのライブは参加メンバーがとにかく素晴らしく、一緒に演奏出来るのが楽しい。
今日は一番はじっこの位置で、グルリと演奏者全員が見渡せる場所。真横がパーカッションの中島オバヲさんなのだが、リハーサルの時から本当にいい演奏をされるので、つい目で追ってしまう。ハっとさせられる演奏は、やはりその人の心が一緒になって押し出すように出る音なんだなぁと考えたりする。なんてことのない8分音符の「シャカっ」というシェイカーのたまに入る音が、とにかく説得力があって感動する。
私の好きな緊張感がある。
こういう緊張感のある場所が好き。
スリリングな時間、それが私の感じるtokyo smoothのライブなのだ。


投稿日:2009年07月24日

2009年07月24日

先月入れたトイレ洗浄剤がタンクの先で詰まっているみたいなのだ。
水の流れに影響はないのだが、使用後にゆっくりと濃い色の水が流れ出て来る。その色の跡がついて今ものすごく見た目が汚い状態になっているのだ。
流しても流しても、一番最後に血のりみたいな洗浄剤のかたまりがツーっと流れて来る。なので、もうこの洗浄剤が溶け切るのを待つしかなくなった。
ここ数日は更に色が濃くなってきたので、水が流れて来るところを狙って、お掃除洗剤を撒いてみる。なんかいい感じかも・・・と思ってまた流してみると、最後に濃い液がドロっと垂れてくる。
はぁ〜〜〜あ。
お掃除洗剤や洗浄剤で空間はとてもいい香りになっているのだが、見た目が半年トイレ掃除をしていない状態に見えるから、わかってはいても入る度に「うわっ」と思う。
こういう水まわりの場所は綺麗にしていないといけないんじゃなかったっけ。
1ヶ月ぐらいで、あの洗浄剤はなくなるんだったわよね。
もうちょっとの辛抱。しかしそれにしても洗浄剤を入れて、かえって便器が汚れるだなんて。こんなことってあるんだわねぇ。
「洗浄剤詰まって、便器汚れる」
何もないとあまりに虚しいので、ことわざっぽいと思ってなんとか修行だと言い聞かせ、日に何度もトイレ掃除をやっているのである。


投稿日:2009年07月23日

2009年07月23日

朝起きたら南側の窓を開け、するとダンボはピョンと外に出て行く。
ダンボくんには朝のお勤めがあるのだ。
一去年、排水口からニョキニョキと生えてきた大きな雑草。その冬に枯れたので気にもしていなかったが、去年はパワーアップして低木サイズにまで成長をし、秋には稲穂ぐらいの種をビッシリつけて冬にまた枯れて行ったのだった。
今年は種が飛んでほうぼうに芽を出していて、排水口のは5月の時点で私の力では引き抜くことが出来なくなっていたのだった。
気持ち悪い謎の雑草。排水口の穴から出てきて、何の世話もしないのに我が家で一番立派な木に成長するところが不気味で、秋につける種はネトネトした手触りで、犬の背中にひっついてきたり、落ちた洗濯物にひっついていたりとその生命力にも気味の悪さを感じていたのだ。
「ダンボ、おしっこして」
「そこで」
「そう、そこで」
シーーー。
「いいこだね」
ダンボのマーキング癖を利用して、あの雑草と闘って約2ヶ月。引っこ抜けなかった太い幹も、おしっこには勝てなかったようで、毎日雑草におしっこをかけさせ続けて、ようやくあの謎の雑草が枯れようとしているのだった。
昔、「朝一番のおしっこを飲む」健康法が一時話題になり、私の友人は本当にそれを実行して健康を手に入れていた。しかしまた、あの強い雑草をも枯らす強い威力だってある。
とにかく、ダンボがおしっこをしたものは朽ち果てて行く。
ダンボが実行犯で、私が陰の黒幕。
報酬はオヤツ1粒。
私は窓辺に立ち、そっとそれを見ていた。
そうして彼のピストルは、雑草の息の根を止めたのであった。


投稿日:2009年07月22日

2009年07月22日

外来日。待ち合い室にテレビがあって、いつもは何となく眺めているだけなのだが、今日は皆既日食の生中継が放映されているせいか、テレビを見ている人が多い。
天気があまりよくないと言いながらも、日食の様子をリアルタイムでレポートしているので、テレビを通してだがだんだん病院の待ち合い室も日食ムードになってきた。
「少しずつ暗くなってきました」
「そして、だんだん翳ってきましたね」
「ゆっくり」
いくらテレビでやっていても、本当はその場所に居るのが一番いい。人間の視野で捉える感覚とはやっぱり違うんだなぁとレポーターの人の声の興奮度数で思う。
「あぁっ、ダイヤモンドリングです」
病院の待ち合い室のテレビは音量が小さく、途切れ途切れにしか言葉がわからない箇所があるので、虫食い状態で音声を聞く。こんな時、誰かが「ボリュームあげましょうか」と言ってあげてくれたらいいのになぁと思いつつ、座っている人達はみんな耳を澄まして聞いていた。
テレビで観る日食は大興奮するようなものではなかったけれど。
病院の待ち合い室で、名前も知らない人達と偶然一緒に観ることになったことが、私には少し感動的だった。
次の皆既日食は26年後。もうその頃には隣りの人も私も観られないかもしれない。
でも、もしまた観られるのならきっと今日のこの光景を私は思い出すだろう。
”あの頃の私、とても幸せだったわね”
そんな風に今日の日を思い出して、懐かしくあたたかく思うんだろう。
日食より見ておきたいものはここにある。
待ち合い室の椅子に座り、きょろきょろと周りを見回して・・・。覚えておきたいな・・・と、この景色を胸に刻んだのだった。