午後、部屋に居ると
「ドドーン、ド、ドン!ド、ドーンドン!そ〜れ」
と、音楽が聞こえてきた。
「ド、ドーンドン!そ〜れ!」
「みんなだ〜いすき、あ〜んぱ〜ん〜まーーーん」
これはどうも幼稚園から聞こえてきているらしい。アンパンマン音頭というヤツではないのだろうか。盆踊りチックな太鼓の音とお囃しが入っていて、何かの練習でもしているのだろう。
私も随分前にJAたかつき音頭の音楽のアレンジをしたことがあって、「ド、ド〜ンドン!そ〜れ!」とスタジオで録音したことがあったのだ。録音しているうちに体が勝手に踊って来て「音頭」の威力ってすごいなと思ったが、このアンパンマン音頭も繰り返し流れて聞こえてくると体がだんだん音頭に合わせて動いて来るではないか。
あれれれれ〜。
<誰か、とめて下さいまし〜>
「ドドーンドン!そ〜れ!」
「アーンパンマーーーン!」
やろうとしていたことを忘れてしまい、音頭に支配されてしまった。
幼稚園のみなさん。
少し離れたところに住んでいるオバチャンもお部屋で踊っていますよ。
そ〜れそ〜れそ〜れそ〜れ。
しかし、
外から聞こえる音というのは、急に聞こえてきて急に聞こえなくなるのが特徴なのだ。
<ピタッ>
シ〜〜〜〜〜〜ン。
あ、急にやめないで下さい。
幼稚園から聞こえてきていたアンパンマン音頭は急に止まって、また静かな時間が戻ってきた。
さっき、私は何をしようとしていたんだっけ。
台風のようにアンパンマン音頭は私の体を吹いて行き、台風が去ったあとと同じく、音頭が去ると共に私の頭ん中も塵ひとつない景色となったのであった。
う〜〜〜む。
こんな形で無の境地になるとは・・・。
音頭は全てを制するのであった。