血液内科の外来日。
最近は血液内科の外来の段取りもわかってきて、診察や輸血の流れも理解したことで外来ものんびり出掛けることが多くなってきたのだ。
合計4つの診療科にかかっているうち、血液内科は朝病院に着いたら中央採血室にまず向かう。ここで採血をして貧血の度合いや今飲んでいる薬の血中濃度などのデータが先生のもとに届いて、それから診察を受けるのだ。
「ヘモグロビンの数値、どれぐらいに減っているかなぁ」
気になっているのは貧血の度合い。
今はだいたい2週間に一度の輸血という対処療法で、薬が効いてくるのを待っているところ。薬は効いて来るのに半年ぐらいかかるらしいので、今日の私のクエスチョンは「貧血の度合いがここしばらくでどれぐらい進んだか」程度で、すっかり外来と輸血というサイクルに慣れてきていたのだった。
診察室に呼ばれる。
「今日はね、採血の結果がまだ上がって来ていないんですがね」
「はい」
「まぁ、低いはずなんで水曜日か木曜日に採血で予定を入れましょう」
「はい、お願いします」
これで診察が終わるのかなと思ったら、今日は先生がくるりを後ろを向いて何か資料を取り出してきた。
「あの、ですね」
「はい?」
「ちょっと調べてみたんですけれど」
よくわからない専門的な検査結果の紙を見せられると、私は「赤芽球癆」という病気だけにくくれないかもしれないという話を軽くされたのだった。
「えっ、それは・・どういうことですか」
病院でだいたいわかるようになってきたことは、先生が病名を告げる時というのは、それが「風邪」であっても「肺炎」であっても「難病」であっても、口調があまり変わらないということで、それが余計に不安を募らせるように今ではなってしまっている。
先生の説明では、「リンパに悪いものがあるらしい」みたいな状況のようで「悪い」「リンパ」という二つの単語があるだけで血が頭に上っていくのがわかった。さっきまでの平穏な待合室での時間が恋しい。また、何があるということなんだろう。
はっきりわかるまではなんとも言えないけれど、慢性の特殊な白血病の可能性があるらしく、詳しく調べるために再度血液検査を受けて帰ることになった。
思わず、「割と早く死んじゃうんでしょうか」と私は聞いていた。
「いや、10年ぐらいは大丈夫ですよ。慢性になるんで」
これを喜んでいいのかどうなのか。
帰り道、今日は暗かった。
たまに雑誌やテレビのインタビューで「私はね、もういつ死んでもいいの」と答えている人がいる。
が、私はまだそんな考えには行き着かない。何かちょっと難しい病気の可能性があると聞けばとても心が沈むし不安に覆われてしまう。
もうちょっと達観出来たならいいのになぁ。
おまけの人生だと思っていたけれど、私は欲張りだ。
17日の外来で結果はだいたい出ているということだった。
あまり悲しくならないように、あまり不安に覆われないように結果を待とう。