父に電話をした。
「はいもしもし吉川ですが」
というのが電話に出た時のいつもの父の第一声だ。
それに対して
「あ、もしもし?・・・わたし」
と、言うのが私で、みきですと名乗る前に父は私だと気づくので「あぁ、あんたか」と返事が返って来るというのがいつものパターンなのだ。
が、今日は「あ、もしもし?・・・わたし」と言ったら父は慌てて「あぁっ!すんまへん。どうもすんませんでしたっ!」とデカい声で言うではないか。
「へっ?」
「えろうすんまへんでした!」
父は誰からの電話だと思っているんだろう。
「あの、みきですけども」
と、念を押してみた。
「なんか届いとったわ!すんまへん!」
めずらしい。私だとわかっていて「すんまへん」と言えるだなんて。逆に驚いたのだ。
「なんか届いとった」の「なんか」はバレンタインデーのチョコレートのことで、う〜〜んと昔、若かりし頃、余った義理チョコをしげおっちにあげたら仏壇にお供えをしたまま夏になっても食べることがなく、私がだんだん気になってきてしまって食べてしまったということがあった。
<この人は女の人からチョコレートをもらえるタイプじゃないわ>とあらためて思って父のことが可哀想に思えて来て以来、バレンタインデーには父にチョコレートを渡してきた。
いつもなら「なんか届いたわ」と、たにんごとのように電話をして来る父。それが、今年は電話もかけて来なかった。
「今年こそ、ワシは死ぬと思うからな」と、正月に宣言されていたので、また入院でもしちゃったのかもしれないと心配になって生存確認の電話をしてみたのだった。
元気でいることがわかればそれでいい。
「今な」
「?」
「うどん食べてるねん」
父はちょこっと自分がやましい気持ちを抱えている時、サービス精神で何かしゃべろうとするのでおかしい。
「ヘルパーさんにな、作ってもろたうどん今食ってたんや」
「あ、そう!?」
ちょびっと沈黙があり。
「なんか・・・」
「はい?」
「高島屋の紙袋が届いとったわ」
チョコレートは高島屋のオンラインショップで購入したものである。
時々、猪突猛進型の父がつたない感じになることがあり、このときばかりは父のことがおかしく思えてくる。
「誰か来た?ちえちゃんとか」
「来えへんよ」
隣町に住んでいる妹一家からはやはり何のアクションもない様子だった。そこで、めげない父は「チョコレート、来たから遊びにけえへんか」と孫に電話したらしい。
「誰もけえへんかったわ」
「あ、そう」
「みんな忙しいらしいわ」
ちょっと可哀想になった。でもまぁいいじゃない。私がその分イベントごとは忘れないようにするから。
心の中でつぶやていたら・・・。
「ほやから、昨日と今日とでヘルパーさんと消化した」
と、しげおっちは言うとった。
そんなに急いで食べなくてもいいし、それに”消化した”って・・・送り主に対して言うにはちょっとおかしな日本語だと思うのだが・・・。
まぁいいか。
初めてチョコレートをもらった時、仏壇にお供えをしてもったいなくて食べられなかった父はあれから「すぐに消化する」までに成長した。
ええんか悪いんかようわからんのだが、これもなんでもない幸せのカケラなのだと思うのであった。
ほほえましいですね〜( ´ ▽ ` )ノ
しげおっちさんに会ってみたいなぁ!と、ふと思っちゃいました♪
ウチはバレンタインのチョコレートもお酒もチビチビ…チビチビ…消化してるみたいです(笑)
チビチビ・・・消化^^されているのが面白いですね。わはは!多分、あすりぃちゃんからもらった嬉しさですぐに食べてしまうにはもったいないんではないかしら?男性って女性からしたら意外なところですんごくナイーブですよね^^ところで、しげおっちには会わない方がいいですよ。とても・・・疲れます・・><