弘法さんに行こみゃ〜。
出好きの祖母は「弘法さん好き」だった。
今でこそフリーマーケットはめずらしいものではなくなったが、毎月21日は東寺の弘法市は朝から日が沈むまで境内での市が開かれていて、売り手が業者さんという違いはあれど、東寺はフリーマッケットの会場になっていたのだ。
外国から来た旅行客や「京都っぽい感じ」を味わうには楽しいマーケットだが、子供には価値がわからないものばかり。古道具の良さもわからないので、一緒に霊もついて来るんじゃないかという不気味さを感じたものだった。
しかしおばあちゃん世代にとっては、いろんな物が並べられている楽しい場所。祖母にとっての雑貨市だったのではないだろうか。関西には住んでいない祖母が「弘法さん」「弘法さん」とよく口にしていたので、祖母にとって大阪の私の家から行ける楽しい場所は東寺の市だったのだと思う。
丁度下界は春のお彼岸の時期。
今頃祖母は「弘法さんに行こみゃ〜」と言って、ハンカチやティシュやアメちゃんが入った小さなバッグを手に、京都の東寺の辺りに居るような気がするのであった。