遠くまで行かなくても、すぐ近くにも夏はたくさんある。自転車に乗って、近くの緑道を走れば緑の木々がそれだけで夏らしいのだ。
好きなのは、しばらく行った所にある和田堀公園という所で、この一帯にはグランドがあったり、噴水のある池やバーベキューをする場所もあって、テントを張っている人まで居るぐらいのエリアなのだ。
中でも好きな一角がある。
釣りぼりや売店のある辺りだ。
都内にも釣りぼりが何軒かある。どこもお洒落な建物ではない、昔からあるそのままの施設で、ここの釣りぼりもプールみたいな水槽の周りに人が座って釣り糸をたれているような場所だ。売店が併設してあってラムネやかき氷が売っているのだが、そこは私が子供の頃によく預けられた愛知の田舎の「おばあちゃんの家」の辺りと同じ、タイムスリップしたかのような感覚になる場所なのだ。
そこの前を通ると懐かしい気分になってスピードを緩めている。
中に入ってみようか。
いや、犬が一緒だとダメかな。
そこだけ、時間がうんと昔で止まっているような・・・。
そこがいい。
日がな一日、釣り糸をたれて。
おじいちゃんは一匹も釣れなかったっけ。
「可哀想だから、お魚の話には触れないでおこう」と、幼稚園になるかならないかぐらいの年だったのに、気をつかった覚えがある。
あの田舎のおばあちゃんちはもうない。
あぁ、でもここに見つけたよ。
自転車で緑道を来ると、ここをわざわざ通る道を選んで居る。
おばあちゃんちを見つけた。
古びたちょっと埃っぽい木造の。
こんなに近くにあったのだ。