D−naughtのレコーディングで恵比寿に行った。
私が最初にスタジオでレコーディングをした頃は、今のようなパソコンでのレコーディングはまだなく、キーボードの音源ラックが2メートルぐらいの高さに積み上げられるところから始まっていた。その音源ラックを繋げてマニピュレーターさんが音色を作って、それで一音ずつ曲の頭から音色を流し込んでいたのだ。途中でシーケンサーが音飛びを起こしたりすると、またやり直し。音色も一音色作ってもらうのに、それぞれ時間が必要で、時には一時間以上、音が出来上がるまでに待つことだってある。レコーディングは、手順を踏んでサクサクとやっても時間は掛かるものだった。
しかし、今は違う。メカがどんどん進んで、今は音色を作るプロの仕事はなくなり、マニピュレーターという職業自体はもうないに等しい。どのスタジオでも見た2メートル程の高さの音源ラックもない。
頭から音源を流し込む作業も、しないプログラムが多くなって、パソコンも楽器もない状態でその日のレコーディングが始まるケースもめずらしくはなくなった。
今日のレコーディングもそうで、家から持って来たハードディスクをエンジニアさんにお渡しして、エンジニアさんがその中のデータをスタジオのシステムに入れるというパターンで、それはそれは静かなやり取りで終わったのだ。
このパターンになってから、だいたいスタジオ作業時間は6時間から8時間は短縮出来るようになり、その分スタジオに入るまでの家での作業量は増えたが、当日のスタジオで思わぬトラブルで焦ることもなくなり、歌入れに皺寄せが行くことはなくなった。今は深夜に歌入れをする、なんてこともなくなったので、歌を録音する時間的な環境は良くなったような気がする。
歌とラップとコーラスをたっぷり入れたにもかかわらず、夜の8時には終了。
方法は変わっても、レコーディングは好きな仕事だ。これが正しいという答えのない「音楽」というものに足を踏み入れて、ある一つの曲をテーマに一つ一つ自分達の答えとしての輪郭ある物に置きかえる作業。
今日はみんなでシンプルに駒を進めて終われたいいレコーディングだったと思う。