地下鉄の駅で電車を待っていたら、偶然Nくんとバッタリ会った。
Nくんは数年前に先輩の紹介で知り合ったエンジニアさんなのだが、家はどこなんですかという話からお互いの家が徒歩5分程の距離にあることを知って驚いたのだ。いつも私が行くスーパーの道中にNくんの家はあるので、本当にそのうちに会うんじゃないかと思っていたが、いつも買い物に行く時の私の格好は、すっぴんに加えそれはひどいものだった。なので、もしかしてすれ違ってもわからなかったかもしれない。
しかし、バッタリはある。
普段私は小雨ぐらいなら、駅までバイクで出かけている。東高円寺にバイクの駐輪場のあるので、いつもはそちらを利用していて、最寄り駅はバスで出かけた時に利用するぐらいなのだが、今日はたまたまバスで出たのだった。そして改札を入るといつもはホームの人が空いているところにフラフラと歩いて行くのだが、この日に限ってこれまたなんとなく改札を入ったすぐの所にボンヤリ立っていたのだった。
Nくんも、仕事でたまたま今日はこういうルートで出かけるんだということだった。改札を通ったら目の前にボ〜っと立っている私を見つけたんだろう、声をかけてもらってそのまま一緒に赤坂見附まで行ったが、やはりいくらご近所で会う可能性があるとはいえ、思わぬバッタリ会うというのはめずらしいことなのだ。
<もしかして>
<この人が王子さまなのかしら>
<そう言えば、去年も先輩の家で一緒に年越しソバを食べたわ>
胸きゅん!
しかし。
話を聞くとNくんにはもっとバッタリ会う人が居るらしい。どうしてこの人とこんなに会うんだろうと思うぐらいの遭遇率だそうだ。
残念だが、私のカンではおそらくNくんはこの人とつきあうことになるであろう。
私も そう言えばバッタリよく会う人がいる。
斜め前の家の独身のおじいさんがそうだ。
「それじゃ、またね~」
赤坂見附に着くと王子は電車を降りていった。
「バッタリ会う」というのは不思議なもんだ。ものすごい大恋愛を3秒間ぐらいで駆け抜けたぐらいのエネルギーの出入りが起こる。ビックリしやすい体質の人ならこの感覚はわかっていただけるかもしれん。
しかしさすがご近所さん。
近所に出来た肉汁うどんの店の情報を知っていた。
「あの店、一回行ってみよう」
まさかの肉汁うどん情報を得ることとなった「バッタリ」であった。