投稿日:2010年04月06日

2010年04月06日

夕方、雨戸を閉めようとしたらダンボが家の前にピョーンと飛び出て行った。
「こら、ダンボ!」
私も裸足でピョーンと出て行き、ダンボを捕まえたら、お隣のKさんの家に斜め裏のおばあさんがやって来ていた。斜め裏のおばあさんは、恐らく家の境にベニヤ板をつけるのを指示した張本人だ。お年寄りだが、こちらのお年寄りは私の母方の祖母タイプ。怖いものナシの無敵オーラがプンプンと漂っている。
「あ、こんにちは。すみません。犬が出てしまって」
「犬!」
おばあさんは私を見ると、挨拶もなく「犬!」と一言吠えたのだった。
「ず~~っと、鳴いているでしょ。」
おばあさんはKさんの家に、ウチの二階に住む2匹の犬の鳴き声がうるさいので相談をしに来たのだと言う。確かにその時も2匹の犬がキャンキャンと鳴いている最中だった。ここの犬は飼い主さんが居ない時に、一日数回吠え続けていることが多いのだ。私も迷惑に思っていたのだが、ウチも同罪だしと目をつぶってきたのだった。しかし、一回鳴き出すと1時間ぐらい吠えている。しかも2匹なので相当イライラはするのだ。
「だから眠れないの」
「私だけじゃなくて、あちらの家にも具合の悪いおじいさんが居てね」
「私もすごく調子が悪くてね」
でも自分ではクレームをつけたくないらしい。誰かに言って欲しくてKさんの家にやって来ていたと思われる。そこに丁度私が来たみたいなのだった。
「みんなが迷惑しているのよ」
ちょっとこのおばあさんはウチの父とも似ている。そこまで極端な言い方をしなくても事情を伝えられる、と聞きながら冷静に思う自分が居るところなんてそっくりだ。
<でもね、ベニヤ板だってちょっと迷惑でしたよ。>
多分そんなことを言えば父と同じで烈火の如く怒り出されるのだろう。
二階の人はいつも留守。水曜日がお休みみたいなのだが・・・・。
おばあさんは当初Kさんに苦情を言ってもらいたくて、Kさんの家を訪ねたみたいだった。だがそこへ偶然、もっと若い鉄砲玉が現れた。<誰でもいいから私のこの怒りを鎮めなさい>という感じで、そういえば私も会話に無理矢理引き入れられた感じだったのだ。
もろもろ事情は把握した。
<おばあさんが行けば?>
<おばあさん家の家族に行ってもらえば?>
いろいろ思うことはあったが、いつもよくしてもらっているKさんを、ここで助けなくては!と思って、おばあさんに「では、私が不動産屋さんにお伝えしますので」と提案をして納得をしてもらうことにしたのだった。
それからすぐに不動産屋さんに電話をしたのだ。
概要を伝えると今、担当が留守なので担当の者が帰って来たら詳しいお話を伺いに電話をさせますと言っていた。
その日、電話は掛かって来なかった。
ここの不動産屋がまたフォローがテキトーな所なのだ。
急に心細くなってきた。
今日の会話で、おばあさんの部屋から一番近い距離に過ごしている他人は、私であることもわかった。
なんだか気が重い。
ここは一階、それなのに酸素の薄い高山にでも登っているぐらい息苦しいエリアになったのであった。


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