新宿に行った。
渋谷、新宿はとにかく人が多い。
だが、イメージとしては渋谷の人混みは「祭り」で、新宿の人混みは「なんだか人がわんさか居る」といった感じだ。この二つの街の人混みの種類は私には少し違って見える。
ずっと以前に不思議な喫茶店に入ったことがあった。
そこは外から見ると、@@coffeというコーヒー豆のメーカーの看板が出ている、どこにでもありそうな町の喫茶店だった。何げなく中に入ったのだったが、入るといきなり独特な世界に足を踏み入れた感覚になった。
店内は埃が舞っていた。天井にはミラーボールが吊られていて椅子は種類が不揃い、印象に残ったのが、ベルベット生地で下にフリンジがついているこれまた埃っぽい椅子だった。
「イーラシャーマセー」
店員さんは全員日本人ではなかった。テーブルの上には初めて見たメーカーのソースが置いてあった。
出るに出られなくなって座ったのだが、中の客は競馬新聞を読み、他は何か怪しい商談でもしているかのようなちょっと怪しい客達が座っていた。
ドア一枚を隔てて、いきなり異様な空間となったその落差の大きさに戸惑ったまま、コーヒーか何かを一杯飲んでいる間ずっと私は落ち着かず、逃げるように店から出たことを覚えている。
今はそこはコンビニになっている。
外と中との世界が一致する明るい店内のコンビニだ。
こんなに人が多いのに、今日も知り合いの顔を見つけることはなかった。
ふと立ち止まってみる。
人の行き来は絶えることなく。
ビルの向こうに夕日が射していた。