投稿日:2007年05月13日

2007年05月13日

3歳か4歳の頃のことだ。
家の前で友だちと遊んでいて、ふと輪からはずれたら電信柱で張り紙を張っていたおじさんに声を掛けられた。
「チョコレート、買ってあげようか」
チョコは大好きな食べ物だ。
だが、
”このおじさん、あやしい”
”チョコレートを買ってくれるだけじゃない”
”悪い人に違いない”
”断ろう”
大好きなチョコレートよりも警戒心の方が勝ち、ドキドキしながらも「いらない」と言って走って家の前まで帰ってきたのだ。
友だちは誰も気付いてはいなかった。
ドキドキは収まらなかったが、とにかくホっとした。そして子供心に自分のことを警戒心が強い方なんだなぁと思ったのだ。
だが、警戒心が強い割には、「鵜のみ」にする傾向にある。
「え、ほんとー?」
「嘘でしたー。けけけ」
相手はちょっと遊び気分で、アッサリ話をマトモに受けることが面白いんだろうが、もう私は人生の中で2000回以上はこの遊びに付き合ってきたのだ。
盾を立てている場所には二重にも三重にもバリアを張って、セキュリティはかなり厳重になったが、総合してみれば、鍵をバッチリ閉めて出たにもかかわらず、帰ってきたらすぐ横の窓が網戸のままだったという自分の部屋の戸締まりと自分自身の戸締まりは非常に似ている。
「え!?」
「嘘でしたー」
丁度一年前、私は”家なき子”になった。
あれで、もう警戒心を強化しようという気がなくなった。「鵜のみ」体質の箇所は、鍛えてもそこは別の何かには変わらないという結論を持ったのだ。
窓から風が入ってくる。
カーテンがフワフワと揺れて波打つようだ。
鍵は相変わらず、どこか掛け忘れている。
だが、今年の5月はのどかな日曜日を送っている。


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