久しぶりに駅前のスーパーの中にあるパン屋さんに行った。
ここのパンはとても美味しいのだが、数年前のリニュアルを機にとっても不便なシステムになり、だんだん足が遠のいていたのだった。
まず第一にパンが専用ケースに入ったのだが、そのケースの扉が重たいガラスかアクリル製の扉で手前に引いて更に90度上に持ち上げてそれでパンを取らねばならなくなった。少なくとも片方にトレーを持ち、もう片方でトングを持っているわけで、それに加えだいたいの人がお買い物バッグを肩から掛けているというのに、それで重たい扉を上に上げてその扉が降りないように押し上げた状態でパンを取るというのはかなり負荷のかかる作業で、一体誰がこんな方式をよしとしたのかとリニュアル直後から私は怒っていたのだった。
その上。
レジでお会計が済むと「パンの袋づめはセルフでお願いします」と言って、そのまま客は釣り銭を受け取ると奥のテーブルにトレーを持って行って自分で袋づめをせにゃならんかった。
パートのおばちゃんたちが釣りを渡し終えて雑談を再開する中、財布片手にトレーと買い物袋を抱えてヨロヨロと移動する時、なんだかおかしな図だと思ったのだ。混雑時はわかる。が、いつもいつでもいつだって「セルフでお願いします」と言われるのはちょっと腹が立った。セルフのご褒美にもらえる源氏パイは私はいらん。荷物が多いからパンを入れて欲しいのである。
一度、私と同じように不満を持っていたと思われるお客さんがキレていた。
店の人が当たり前のように「セルフで」と言ったその言い方がエラそうだったのも、理由の一つだったんじゃないだろうか。
とにかくリニュアルはお客にとっては不便きわまりないものでしかなく、”なんか面倒臭い店だな。”そう思ってから私もあまり行くことがなくなっていた。
しかし。
今日久しぶりに行ったら、あの面倒臭い扉はあったものの・・・・。
レジでは「パンの袋づめの方はセルフでされますか。そうしますと2円引きにさせていただきます」
<源氏パイをあげるから自分で袋づめしてね>的なニュアンスが消えて、丁寧な対応になっていた。
「袋づめはいかがなさいますか」
「お願い出来ますか」
と答えた。
なんか嬉しかった。
あぁ、これぞ待ちわびた選べる歓び。
源氏パイはいらない。
お客様の声の箱に要望を書いて入れてから数年、恐らくようやく私が書いた内容と同じ要望書がある程度の人数分溜まったのである。