投稿日:2011年09月27日

2011年09月27日

山本ふじこさんの所属する劇団ヴォードヴィルショーのお芝居「アパッチ砦の攻防」を黒川あっちゃんと一緒に観に行った。
ヴォードヴィルショーのお芝居は今回が多分5回目。「お芝居」「演劇」に対して、こむずかしい前衛的な世界だと抱いていた印象を取っ払ってくれたきっかけとなったのが、下北沢のすずなりで観た「その人、女優?」だった。
ふじこさんがいつか「私ね、うちの劇団が大好きなんですよ」ととびきりの笑顔で口にしたことがあった。長く所属していればいろんなことがあったはずなのに、まるで入団したばかりの新人さんのような表情で「うちの劇団」について語る笑顔が深く印象に残った。
お芝居を観れば、ふじこさんの言葉がなんとなくわかるような気がしてくる。
ストーリーももちろん面白いのだが、お芝居の中にあるユーモアの質の良さ、懐の広さが素晴らしいのだ。そんなことを私はヴォードヴィルショーのお芝居に感じていて、作品というものは、わかりやすくするために温度感をざっくり四捨五入してしまうことや、例えば笑いの場面でもうちょっと毒づいてみせたりすることなど、これっぽっちも必要ないのだと大笑いをしたあとに教えられる。
今回の「アパッチ砦の攻防」は長きに渡って再演している作品なのだそうで、だが今でも台本は書き直され続けていて、セリフもその時代に添ったものに直されている部分もあるらしく、ふじこさんのセリフはきっと役柄からして再演の度に書き直されてきた箇所なのだと思う。一番最初に演じた時から年代を追って、ホームページに変遷をアップしてもらいたいぐらいそれぐらいコレクションが楽しめそうな役柄だった。
時々ふと、音楽をやることやそれから自分が大事にしている考え方に対して自信をなくしてしまう時がある。些細なことが積み重なってそういう気分になることはきっと誰にでもあることで、私にとってはそれが音楽と共に生きることの証なのだとは思うのだが、そんな時には誰かのまっすぐなお仕事を見るのが一番の薬になるのだと思う。一心に目の前の自分の課題に取り組んで、そして目の前にいる誰かが笑ってくれたらそれでよし、そんな姿を見ると閉め切った窓の空気がスっと流れて澱んだものがだんだん澄んで行くのだと思う。
しかし、角野卓造さんが出て来るとどうしても「角野卓造じゃねぇよ」のギャグが頭をよぎって芝居の邪魔をする。役者さんにとっては、物真似は迷惑なんじゃないかなぁ。
また次の公演も観たい、そんな「おもろい」東京ヴォードヴィルショーの「アパッチ砦の攻防」だった。


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