病院帰りの某地下鉄の駅を下りて。
地上に上がるエレベーターで、じいさんと一緒になった。
じいさんは大きな荷物を持って、荷物が重たいからなのか、エレベーターがノロいからなのか、イライラしている様子。
エレベーターを下りると、不機嫌な顔で荷物を引いて早足で去って行った。
せっかちそうな、じいさん。
バス停の方に向かうとじいさんはバスを待っていた。
同じバスなのか。
じいさんの方に向かって歩いて行くと、じいさん、バスの時刻表を見た後に車道に下りているではないか。
危ないよ、じいさん。
そこは青梅街道と呼ばれているデカい道路、だがじいさんは左側車線のド真ん中に立ち、バスが来ないのかを確認しているのであった。
車道に仁王立ち。
そうしてブスっとした顔で歩道に戻ると、荷物を引いてバスを待たずに歩き出したのだった。
じいさん、そんなに急いでどこへ行く。
「あら、バスが来たわ」
そんなに急がなくても、バスが来たのに。
お先に。
私はバスに乗りますよ。
と、思っていたらバスはそのまま目の前を素通りして行ったのだった。
「なんで!」
「待っていたのに!」
あら。
じいさんに見とれていて、私は自分の乗るバス停を間違えていたのであった。
私はその後、バス停で一本バスを待ち、
そうして家へ辿り着いた。
おわり。
日常とは、昔話や童話のように、何かオチのある話にならないことの連続なのである。