一回目の全体通しリハーサル。
今日は金沢用のメニューで、仮りリーディングも込みで全体の流れを組み立てるリハーサルで、それまでのリハのように一曲やって「ここはどうしようか」とすり合わせをするのではなく、一本のライブメニューをスルーでやってふかんで今度は見て行く形のリハーサルだ。
ここでMCが入る。
ここはつなぎで行く。
メニュー進行表をもらって、大山氏から流れの説明を受ける。
リーディングが実際に入って来ると、同じ一曲でも表情が随分変わる。今日はなんだかピンと張った、私が一年で一番好きな晩秋のあの澄んだ空気がスタジオの中でする。
音楽をする時、私はこういう空気の中に居るのが好きだ。祐民子ちゃんの曲の持つ温度も、個人的には晩秋の澄んだ空気を感じてきたので、今日は緊張をするリハーサルだがこういうのは好きな緊張だ。
普段の生活では忘れ物を頻繁にして集中力に非常に欠けた私だが、ライブではこの自分になっちゃいけない。
ちょっとだけ不安になる。
いやいや、不安になっちゃダメじゃん。
黙って仏頂面をしている時の私は、気弱な自分に「出てきちゃだめ!」と言っている時なのだ。
祐民子ちゃんは歌詞を置かずに歌う。
10数曲の中で通していると、時々歌詞がとぶことがあるが、そんな時には”あ、歌詞がとんだな”とバレる空白が出来る。だが、変な見方かもしれないが私はそこに祐民子ちゃんの音楽純度の高さみたいなものを感じるのだ。ごまかしの言葉が出ないまま立っている姿は、正直な一人の人間の姿そのままを晒していて、でも晒されながらどこへも逃げない姿を同時に見せてくれる。そんな人間だからこそストレートに届く歌詞を書けるんじゃないか、だからより言葉がグっと来るのではないかと思ったりする。
歌詞がとんでも不思議と曲が終わると、伝わるものは損なわれていない。すごいことだなと思う。音楽は歌詞をしっかり伝えることも大事だが、そうじゃなくても音楽は伝わってくる。そういうものなんだと、一緒にリハーサルをしてきて感じた。
私も間違えることを恐れずに、この空気を掴みたいなと思った。