花屋さんの店先でポピーを見つけた。
ポピーはだいたい毎年、冬のこれぐらいの時期に10本300円程で花屋さんの店先でバケツに差して売っている花だ。苗や種も売っているので最初から育てることも出来るが、切り花で楽しまれる方が多い花だろう。
キウイのようなグロテスクな蕾。それなのに、毒々しい姿からは想像も出来ない程、華やかな花を咲かせる。このギャップがいいのだ。それから花色はオレンジ、白、ピンク、赤、黄色など明るく、蕾が開くまで何色の花が咲くのかがわからず「お楽しみ袋」的なところもいい。
一度買って好きになってからは、毎年花屋さんで見掛けると「あぁ、もうポピーが並ぶ時期になったんだわ」と思い、手を伸ばす。帰り道には自転車だかバイクだかのカゴに入っているというのが常となった。
「ねぇ、私を連れて帰って」
いつも見ないような場所に目をやって偶然見つけたのだと思っていたが、本当は花に呼ばれたのかもしれない。
蕾は真ん中からピスタチオの殻が割れるように、パカっと開く。そうすると大きなはなびらがフワっと開く。
首から上が変わるだけで、花は本当に印象が変わる。
グロテスクな蕾の時には、ぐにゃっと曲がって上に伸びる茎が不気味に見えるのに、花がしなやかに開いたあとには、この茎の曲がり具合いで、より花のしなやかな印象が増しているように思えるのだ。
「私達、もうすぐ咲くんですよ」
ええ。
知っていますよ。
綺麗な花がね。
家に帰ると茎を短くして、ガラスのコップに差した。
近くに居たバナナが声を掛ける。
「お前さん達は、ずいぶん小さいね」
「いつかちゃんと食べられる位まで大きくなるのかい」
何て答えたのかな。ポピー達。
キッチンに小さなキウイが並んだ。