カーナビが登場するまでは、ナビをする役をするのは助手席に座る人間だった。地図を見て道を把握してタイミングよく道案内をする。自分も助手席に座る時は、運転をしていないので申し訳ないという気持ちが少しはあったので、ナビをしていくらかのお役に立てれば嬉しかった。
今はカーナビをつけている車が多くなり、タクシーでもナビ搭載車両がグンと増えた。今や住所や電話番号を運転手さんに伝えるだけで目的地に着くことが出来るので、前もって地図で把握しておくということを忘れるようになったのだ。
今日はDーnaughtの車で下北沢のライブに行くのに、道中一緒に乗せてもらった。
下北沢は道が入り組んでいて、一方通行だけでなく狭い路地や行き止まりになっている場所が結構あるので、交通手段としては自転車が本当は一番ストレスなく回れる所なのだ。
車は特に把握している人が居ないと狭い道で往生することになる。以前タクシーに乗って下北に行ったら、どんどん道幅が狭くなって行き止まりになったあげく、自転車や歩行煮の冷たい視線をあびながら長い距離をバックでエラく時間をかけて戻ったのだ。
ベテランさんでも蟻地獄のように足下をすくわれる難所、下北の道。
メンバー車にはナビがない。メンバーは車の運転には慣れているみたいだが下北にはあまり来ないらしく、車で行くのは初めてなのだそうだ。私もバイクで行くことはあるが、わかる場所は限定で詳しいわけじゃない。
どうしよう。私も何も考えずに家を出て来たぞ。
困ったと思っていたらTom−oくんが携帯を取り出した。GPS機能がついている携帯ではナビも出来るそうで、未だにムーバで頑張っている私には驚きだった。
わお、本当に音声案内を始めたぞ。
よし、これでもう大丈夫。
・・・・と安心をしたのだが・・・・、
井の頭通りを右折する下北にまだ程遠い四つ角で「目的地、周辺です。音声案内を終了いたします」と言ってナビのお姉さんは突然居なくなってしまったのだった。そんな。その四つ角はみんな知っている所、そのもっと先の所を教えてもらわなくちゃ、だってそこが私達はわからないのだ。
おーい。ナビの人。
その後携帯のナビは反応ゼロとなり、車は蟻地獄へと突入し、例外なく迷ったのだ。踏切りを越え住宅街に入り、坂道を進み・・・・ここはどこ。最後はみんなどこを走っているのか全く見当もつかなくなっていたのだ。
ナビにもいろんな人格がある。
お気楽でアバウトな人に、慎重で裏道は通らない人、めんどう臭くなったら居ないフリをする無責任な人も居るし、かと思ったら少ない情報で明快に答えを出す仕事人も居る。
カーナビは機械だと思っていたが、中にミクロ人間が入っているんだと今日私は発見したのであった。