家の電話には、3種類の電話が掛かってくる。
一つは私宛ての電話。もう一つは普通の間違い電話。そしてもう一つはどういう所なのかしくみがわからないが、知らない女性とエッチなお話が出来る場所だと思って掛けてくる男性からの間違い電話。
引っ越して初めて掛かってきた電話が「2ショットテレクラですか」というもので、この間違い電話が今も絶えないのだが、もう最近は電話を取った時に3つのどれに当たるのかが電話口でわかるぐらいになったのだ。
1はこちらが「もしもし」と出ると普通のテンポで先方は話し出す。2は一瞬間があってそのあとに弾んだ声で間違えましたと言われたり、@@さんですかと尋ねられる。そして3は間がだいぶ開く。何も言わずに切ったりまたすぐに掛けてきて最後にはテレホンなんとかではないのですかと尋ねてきたり、どういうシステムですかと言われるのだ。3は必ず男性で少しドキドキしながら電話をしてきたという緊張感が漂っている。相手が電話に出た!というドキドキが何故か伝わってくるのだ。
今日は、電話を取った時に「あぁ、3だな」とわかった。緊張した間が数秒あって、もういつものことなので”このまま切るのかな”と思っていたら、小さな声でその男性は「田中さんですか」と私に尋ねたのだった。
「いいえ、違いますよ」と答えるとすみませんでしたと男性は言ってそれで電話は終わった。
恐らく3のパターンだろう。電話を切ってそう思ってまた用事に戻る。
するとまた電話が鳴った。
「もしもし」
私が答えるとまた今の男性だったが、今度はすごく明るかった。
「あれっ!すみません!!」
2も3も再度掛かってくることはよくある。男性の声を聞いて、あぁ本当にこの人は田中さんの家の電話番号と間違えた人だったんだと理解したのだった。
「あ、はい。いいですよ」
さわやかに電話を切ると、また静寂が戻ってきた。
今、私は仕事中なんです。
集中している所、中断するのは本当はちょっぴり迷惑。さ、また気を取り直していきましょう。
10分後。
電話が鳴った。
「もしもし」
出るとまたさっきの男性だった。
今度は2回目の電話の爽やかさは消え・・・、
「あのう・・・。」
「エッチしませんか」
「は!?」
思わず脱力した。
なんてややこしい。
おどおどしてみたり、爽やかに振る舞ってみたり。
でも最後は結局そういうことなのか。
「番号、お間違えですよ」
そう答えて電話を切ると、もうその後は掛かって来なかった。
しかしこの人はこんなことで10分位、また電話を掛けようかどうしようか迷っていたのか。
きっとこの人は知らない人間にはいきなりこんなことが言えるが、好きな人には結局好きとも言えないままだったりするのだろう。
で、電話を切ったあとどうしたんだろう。
これで終わり?
腹減ったなーとすっかり切りかわってラーメンでも食べるんだろうか。
どうしているのか、想像不能。
私だったら、こんなややこしいことはしない。
男の人の習性がますますわからないのであった。