D−naughtライブ。今日の会場は渋谷DUO。この一帯はラブホテル街とライブハウスが密集している場所で、ホテルに入る人かライブハウスに用がある人かのどちらかの人がウロウロするエリアなのだ。
一度だけ私は会場がわからなくなって、事務所のY氏に途中で電話をして迎えに来てもらったことがあった。ラブホテル街の真ん中でお互いに姿を見つけて手を振り合って、その後Y氏に荷物を持ってもらい並んで歩いたアレだけは遠距離不倫カップルに見えたと思う。
しかし私の用があるのはいつもライブハウス。ここは6軒ぐらいライブハウスが密接してあるので、恐らく音楽関係者ならラブホテルに用があったとしても道玄坂は避けるだろう。
最近は私もなんとなくの雰囲気で、この二人はライブを見に来たカップルなのか、ホテルに来たカップルなのかの見分けがちょびっとだけ出来るようになってきたのだ。
ホテル組はすこーしだけかたい感じで歩いている。ここは渋谷。別にどこかの国の秘境にやってきたわけでもないのだが、周りの様子を伺うようにして手をしっかり握り合っている。姿勢がやや猫背になっていたりもするので、シルエットで判定出来ることもある。
毒矢を放って来る原住民はいないですよ。
どうぞ車に気をつけていってらっしゃい。
今日は昼間から灯篭のある古びたホテルの前、若い男女が立ち止まっていた。
夜、ライブが終わる頃になるとまたここは景色が変わりヤケに日に焼けた男女がたむろしたり、大音量で音楽をかけながら車が通って行く道になる。今夜は何があったのか斜め向かいのビルにパトカーがやってきていた。
江戸の頃、道玄坂はウサギが跳ねるようなのどかな田舎だった。それを思うとものすごい変わり様だ。
天気のいい日は夜な夜な、餅をつきながら月からウサギがかつて遊んだ渋谷の街を見下ろしている。
”ここもずいぶん変わっちゃったわね”
人にとっては楽しくなったが、今やウサギの遊ぶ場所はすっかりなくなった道玄坂なのである。