私の住んでいるところは袋小路になっているので、通りすがりの人が家の前を歩くことはまずない。ここに住んでいる人か、配達のお仕事で来る人、あとは住人を訪ねて来る人やガスや水道メーターの検針にやって来る人・・・。まぁ限られた人しかこのエリアには入って来ないはずのだが・・・。
実際は違う。
単に私が見ていない、というだけの話なのである。
ポストを開けるといつも何かしらのチラシが入っている。ピザ屋さんのチラシだと一週間に一度ぐらいどこかの店のものが入っているので、もうこっちの管理が追いつかなくなった。次に多いのは土地を探していますというチラシ、それから分譲マンションのチラシで、こちらも私には関係のないチラシになる。他には不要品引き受けますのチラシ、お墓を買いませんか、塾の案内にリフォーム案内・・・etc・・と各種チラシが、私の知らない間に入っているのだ。
取り出しても取り出しても、次にポストを開けたらまた新しいチラシが入っている。
なんだか最近は、ポストを空にすることが、知らない人の仕事上で出たゴミの一部を捨ててあげる行為のように思えてきて、ちょっとストレスになってきたのだ。
チラシはいらない。
いらない。
今日は、部屋の中から偶然チラシのポスティングをしている男の人を発見した。奥の家のポストから順に回っている所だった。ということは、もうすぐ家に来るということなんだわ。
ポスティングの人は家人が見える場所に居ると、そこの家にはチラシを入れずに行くという習性がある。
今なら間に合う!
急いで玄関に行ってドアを開けた。
<ガラッ>
すると、タッチの差で私の方が遅かった。
男性は私と目も合わさずに二階の人のポストにシュシュッとチラシを入れ、背を向けて知らん顔で歩いて行ったのだった。
<知らん顔>が無性に腹立たしい。
おのれ〜〜〜。うむむむむーーー。
しかし、どのチラシが彼のチラシかが特定出来ないのだ。
家の前に出てしまった手前、しばらく去って行く背中を見つめていた。
『あなた、行っていらっしゃい。はやく帰っていらしてね』
どうしてこうなるの。
まるでその光景は、”旦那を送り出して家の前で見送る妻”の図であった。