がび〜〜ん。
ここ2〜3年私は、毎週輸血室にお世話になっているのだが、最近ある疑惑を抱くようになっていたのだ。
それは、輸血室にある体温計の「ピピピ・・」の音が聞こえないということ。
「吉川さん、体温計もう音鳴ったと思いますよ」
と、受付の方に言われるようになって半年。毎週言われていても「あ、うっかり聞きそびれたんだわ」ぐらいにしか受け止めていなかったのだが、「あれ?今日も聞こえてなかったのかなぁ」そのことをようやく自覚してきたのが4月、それから耳を澄ませるようになったのだった。
先々週は聞こえなかった。
先週は聞こえた。
が、それはテルモの体温計。輸血室にあるのと違うメーカーの物。その日は輸血室が混んでいたので別の階で輸血を受けたんだった。
そして今週。
「吉川さん、もう鳴ったと思うんで体温計いただきますね」
あんなに注意してしたのに、聞こえなかった。ただ、遠くで子供がはしゃいでいる声や他の物音は全部聞こえる。輸血室で使っている体温計の周波数だけが聞こえない。
家のピンポンの音もブザーも、あと他のメーカーの体温計なら聞こえるという不思議。
「若者にしかモスキート音は聞こえない」というようにだんだん年を取ると高い周波数が聞こえなくなるらしい。
体温計の音だけが聞こえなくなるとは。
体温計を計る時、これから私はきっと体温より耳のことを気にしながら計ってしまうのだ。
普段同世代の友人達は毎週体温計など計らないだろう。
もう、若くないんだから。
聴音を調べる為に、ピピピ音が聞こえるかしばらく体温計を計るように勧めてみようかと思っている。