去年の春頃のことだったろうか。私はランチタイムにナンカレーのお店に来ていた。だいたいこういう店は店主が現地の人だったりする。日本語で話しても大丈夫。通じるので困ることはないのだが・・・。
食事の後、お水のおかわりをもらおうと手を挙げたら、店主らしき人が私の席にやってきて「なんのかおり?」と尋ねてきた。
意味がわからずきょとんとしていると、再度「なんのかおり?」と尋ねられた。
「なんのかおり?」って「何の香り?」って言われているの?私。
香水もヘアケアグッズも、香りものは身につけていない。
私、なにか臭いのかしら?と、だんだんくつろいでいる自信がなくなってきたのだった。
皿を指してもう一度、店の人は言った。
「なんのかおり?」
香り、香り、香り・・・・。しばらく考えてようやくわかった。
「ナンのおかわり?」
「イエス、ナンのおかわり」
ナンのおかわりはいかがですか?ということだったのだ。
「あぁッ、ナンのおかわりは結構です!」
「あぁ、わかりました」
ニコニコしながら店の人はまた去って行ったのだった。
日本語は難しい。
おかわりだったら水がほしかった。
あら?そうだった。私が店の人に手を挙げて伝えようとしたのは「お水、おかわりいただけますか」ということだった。
なんだかもう一度手を挙げる勇気をなくしてしまった。
そして、店を出たのであった。