「ないないないない!」
「ないないないない!」
「あった〜!」
よ〜く私は忘れ物をする。一旦家を出てから家に戻ることなどはもう日常茶飯事なので、それも計算の上で出掛ける時間に余裕を持つようにしたし、いつからか忘れ物癖はもう直らないものだとして、あまり深く考えるのはヤメにした。
「ない」と言ってさんざん探したあとで手に持っていたり。
忘れないようにとしっかり手に持っていたはずなのに、「こんなところにっ!」と置いていたり。
または「戸締まり、完璧ね」と出掛けて家に帰って来た時に玄関の鍵を開けながら、すぐ横の大きな窓が網戸のままになっていたり。
あぁ〜〜〜っ!ということは数えきれないぐらい有り過ぎる。
もういちいち自分の中の記憶として残っていないぐらいの失敗をしてきた。
が、今日は久しぶりに「私の間抜けなエピソード」として記憶に残る失敗をしたのだ。
今日はとても寒い日。体調がこのところあまりよくないので、仕事にタクシーで出掛けることにした。配車をお願いして仕事場まで連れて行ってもらって、夜10時タクシーに乗って家に帰る途中のことだ。
気の早い私はタクシーに乗ると、降りる時の準備を早々に始めるのだが、今日は鞄のどこを探しても家の鍵がない。ポケットの中かしら?いや、もう一度だけ鞄の中を探してみよう。
車内で全部出してみたものの鍵、なし。
思い当たるのは、行きのタクシーの中で忘れたかそうでなければ鍵を締めた時に、そのまま鍵を抜かずに差したままかのどちらか。鍵がささっていれば家に入れるがそうでなければ今晩私は家には入れないということになる。
こんな寒い日に。
野宿出来るようなガッツはないのです。
不本意ながら家に鍵がささっていて欲しいと願ったが・・・。
いろいろ電話をした結果、行きのタクシーに鍵を忘れてしまったということがわかったのだった。
一つだけ道があった。
近所のNくんが助けに来てくれたらそれは叶えられる。
というのも。
以前、救急車のお世話になった時に自分で鍵が開けられなかったことで大変な思いをしたことがあったので、一つだけ鍵をかけていない窓があるのだ。だがそこは私にはちょっとよじ登ることが出来ない。誰かにお願いをするしかなく、少し前に電話をして「今どこに居るんでしょうか」と事情を打ち明けていたのだった。
結局新宿に居たという、ちっとも近所の人でなくなっていたNくんに来てもらって、スパイダーマンさながらのよじ登りをしてもらって、おかげで私は暖かい家に入ることが出来たのだが、その前は凍えそうになりながら半泣きになっていたのだ。
窓から侵入をしてもらったらダンボがエラく吠えていた。
番犬っぽい対応をしていた。
Nくん、お尻をかまれなかったかしら。
そういうところまで頭が回っていなかった。
でも無事一件落着。
助かった・・・。
ふぅ〜〜。
それにしてもどうしてこういう失敗をしてしまうんだろう。
時々、大きく人の助けを借りる失敗をしている。
Nくんに感謝しなくては。
スパイダーマンは自転車で颯爽を帰って行かれ、反省と感謝と共に深々と頭を下げたのであった。