退院日。
同じお部屋の患者さんに「いいわね〜、退院」と羨ましがられている。
「私も退院したいわー」
「私も急に決まったんで、昨日まではそんな気配がなくても急に決まりますよ」
足元のベッドの患者さんは、先生が来た時に真面目に「明日退院したいんですよ〜。」と話していた。
「だってね、明後日ドーム。クライマックスシリーズだたら行かなくちゃいけないのよ」
冗談でなく、本気で頼んでいて先生もタジタジだった。
<アタシは病人じゃないの。>
強い意志で案外病気は退散していくものなのかもしれない。
今回の入院では本をたくさん読むことが出来た。外に出られないかわりに外の風を運んでくれたのが本だったし、あとは今までは頭ではわかっていたもののなかなか実際にはそうは思えていなかった<なるようにしかならないことは、なるようにしかならないんだ>という言葉にようやく足を止められたような気がする。
なるようにしかならないことは、なるようにしかならない。
でも、必ずなるようにはなるんだ。
山から湧き出た水は川となり、途中に行く手を阻むものがあれば流れを変え、どんなに時間をかけてもそれは海に向かって進んでいく。そうしていつか海にたどり着く。
今回の入院でいろいろ考えることがあったけれど。
最初は崖から落ちたような気分でいっぱいだったけれど。
もう一度元気にしてもらえたのだから。
今は明るい方向を向いている。
一つ一つ、問題があればクリアしていこう。焦らずに。
なんとかなるさ。
今はその言葉をようやく少し、身につけられた気がする。
エラく再会を喜んでくれたダンボと、また幸せな暮らしをやり直そう。