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投稿日:2007年10月10日

2007年10月10日

夜、レコーディングの打ち合わせで、トランペットの辰己くんに家に来てもらった。
なんとなくの構成デモを作ったので、それを聴きつつアイデアをもらったりして打ち合わせをする。
自分が慣れ親しんでいる楽器は、鍵盤楽器。楽器が変わると、気持ちがいいぐらい私は何も知らないのだった。
デモなので、一応それ風にシンセでトランペットを入れているのだが、ちょっと恥ずかしい。
周りの人達にも割と居るのだが、他の楽器を触るとみんなおかしい位初心者になるのだ。ギタリストがデモ作りで鍵盤パートを入れる時もかなり苦戦するようで、8時間かかってやっと鍵盤パートの録音が出来たんですよ、なんてこともつい最近聞いたばかりだった。
「このデモのキーだと、ちょっと響きが綺麗に出ないかもしれんなぁ」
と、辰己くん。
なんだか、楽器の特性上そういうのがあるみたいだ。
「へぇーー」
いろいろ話してくれたが、会話のキャッチボールにならず、私は「そうなのかー」「ふーん」「なるほどー」位しか返事をしていない。住宅展示場に行って、キッチンやバスの説明を受けて「へー」「そうなんですか」「はい」と言っているのと同じであった。
辰己くんは前に音楽の話をした時に、「俺はエアーを通った音がやっぱり一番好きなんよ」と言ったことがとても印象に残っている。生ピアノはエアーを通した楽器、シンセ類はエアーを通さない楽器。シンセは音を出す時にシールドという線を繋いで、直接メカからメカに行ってメカから音が鳴るしくみになっていて、エアーという意味はそういう意味だ。
辰己くんとは20年程の付き合いになるが、普段は持論を口にしない人で、それまで私も音楽論をちゃんと聞いたことがなかった。その話をした時もポツンとその言葉が聞けた程度だったが、エアーの話を聞いて「辰己っちはトランペッターなんだなぁ」と、なんだかいいなと思ったのだった。その言葉が今回一緒にやりたいと思った一番の引金となった。
「あの話、すごくいいなと思ったなぁ」
俺、そんなこと言ってたっけとすっかり本人は忘れていたが。
後はトランペットとトロンボーンの譜面を家で書いてもらうということで、打ち合わせは終わった。
大阪の吹田の音楽スタジオで出会ってから20年。
辰己っちはラッパ一本持ってどこへでも出掛けていくというやり方を、そして私は自宅療養でも続けられるよう機材を覚えた。
音楽をやめられなかっただけだとは思わない。
続けたかった者同士だと思っている。