夜、家に帰って来たらスーツケースの奥に入れておいた「乾燥切り干し大根」の一袋をダンボに食い散らかされていた。
ちょこっと開いていたファスナーのところから首を突っ込んで、引っ張り出したんだろう。フランスに行った時に会う生方さんに渡す「フランスで手に入らない食材」のお使いもの数種類が入ったビニール袋が引きちぎられ、その中の「乾燥切り干し大根」だけが被害に遭っていたのだった。
床に散乱したクズなどを見ると8割は食べてしまったらしい。
あとはまずくなったのかお腹が膨れたのかはわからないが、床に散乱したまま放ってあった。
私にはただのヒモにしか見えないのだが、これを食べ物だと認知していたとは。
素晴らしい。
いや、素晴らしくはない。
それにしてもよくあなた、8割も食べましたね。
私だってそんなに食べられない。だいたいあれは乾燥しているからあのパックの中に収まってはいたものの、お湯でもどしたら相当な分量になると思うんです。キミが食べた量は、だから今頃お腹の中で膨れ上がって、きっと相当な量になっていると思いますよ。
ちょっと。
大丈夫なの。
あんなに食べちゃって。
怒り半分あきれたの半分でダンボの様子を見に行ったら、時すでに遅し。ダンボはしんどいモードにもう入っていて、部屋の中で何度も吐いているところだった。
明日から私は旅行に行くんですけれど、体調悪くされると後ろ髪引かれてしまうんです。しかも前日になって。あなた本当に食い意地の張った犬ですね。
床に散らかした乾燥切り干し大根を拾ったものを見せたが、もう食べる気は失せてしんどそうにただ見つめている。
「フランスには売っていないんだって」
嫌みを言ってやった。
切り干し大根を生まれて初めて食べ、そして一生分食べたニッポンの間抜けな犬の話なのであった。