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投稿日:2007年09月08日

2007年09月08日

金沢21世紀美術館にてライブ。
ここのホールには、ベーゼンドルファーというピアノが置いてある。私は実はこの”ベーゼン”と呼ばれている名器をまだ一度も弾いたことがない。どんなピアノだろう。昨日尋ねたら「ちょっと鍵盤がかたいかも」ということを聞いてビビった。
”鍵盤がかたい”という表現は、恐らく”重い”ということなのだ。
ホールに入って、早速触らせてもらう。
<どぞ、よろしくお願いします>
「かたい」と聞くと、名前まで「かたく」感じてくる。だが・・・・。
ポロン。
あれ。
ポロポロン。
あれあれ。
私は、ピアノに対しての「ウンチク」や「分析力」をほとんど持っていない。耳もチューニング440と441の差がわからないアバウトな弾き手なのだが、このピアノはそんな私が弾いても「す、すごくいい音・・・」だった。特に高い音域の鍵盤の「鳴り」が、今まで触ったどのピアノにもない私にとっての「いい音」がした。
RIMG0044.JPG
どうも今日の調律師の方がすご腕の方らしく、少しお話をさせてもらったが、「タッチ」と「鳴り」を入念に調整してもらったようだった。
スゴク、カンドウシマシター。
ほぼカタコトの日本語で興奮して伝えたら、「このあと、もう少しよくなるよう調整しますよ」と笑っておられてまたビビった。今まで私は調律は音程を合わせる作業だとしか思っていなかった。すごい仕事人の人が居るのだ。
リハーサルが終わって、本番の準備にそれぞれが入る。着替えなどもあるが、本番が始まるまでのステージの裏側の居方はみんなそれぞれで、誰かとヤケに話をしたくなるという人、何か食べないと落ち着かないという人、普段と変わらず過ごせる人、いろいろなタイプがある。私は無口になる方で、静かにしていることが多いが、祝迫さんも祐民子ちゃんも、無口で静かに過ごしていた。
本番は、二人はステージ”上手”から、私は”下手”からの「出」になるので左右に分かれる。出番前、二人と短い挨拶をして奥の通路の方に私だけが行く。
今日のメニューは、ピアノから始まるパターン。
「服部祐民子 歌とリーディング。」
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今までにたくさんの数えきれない程の音楽コンサートやライブが行われてきた。今日も同じ時間にどこかではライブが行われている。そして今日のライブもまた一つのあらたなコンサートになるのだ。
自分の今日の役目は何。
緊張をすると、それを自分に話すようにする。そうするとほんの少し自分自身に冷静さが戻ってくる。
私はアガリ症だ。
祝迫さんがリーディングを始めると、言葉だけでなく祝迫さんの仕事師としての信念みたいなものも空気になって伝わってきた。
調律師の方が、「弾き手の人をひとりぼっちにしないような調整を心掛けています」とリハが終わったらそんな話をしてくれたが、その話が本番になってよくわかったのだ。リハ終わりで調整してもらったピアノは、更に弾きやすくなり、中低域の音が高音域と同じ位良くなっていた。今までにピアノに対して、そんな細かいことまで一度も感じたことのなかった私が、ハッキリわかったのだった。
<すごいね、どんな風に弾いてもいい音がする>
<だから、応援してあげるから、頑張んなさい。>
<あぁ、ありがとう>
ピアノがそばで応援してくれた。
素晴らしい仕事人達がたくさん集まった現場だった。それらを横目で見ながら自分もしっかりやりたいなとあらためて考えた場所だった。
祐民子ちゃんは今日も真っ直ぐ言葉を歌い届ける。
真ん中にあるのは「歌」。
白いホールの中、人がたくさん居る場所なのに空気がどこまでも澄んで見えた。