あっっっっ・・・・・。
洗濯物を干そうとして、部屋から一段低い位置に置いていた足台に足を乗せたら、足台と共に庭に落ちた。
「ゴロン、ドシン」
おそらく2〜3秒の出来事なのだと思うが、こんな時はスローモーションで事が起こっているような感覚で、実際よりも長い時間だった気がする。
振り返れば、2〜3秒の中でずいぶん沢山のことを考えたのだ。
0秒時「ゴロン」
<あっ>
<まさか、足台が倒れるだなんて思いもしなかった>
<転ぶんだな、私>
<だけど、骨折したら大変>
<転ぶのはしょうがないけれど、せめて骨折はまぬがれたい>
<骨折しませんように>
3秒時「ドシン」
幸い、安全な落ち方が出来て骨折をせずに済んだ。足はトンカツ一枚分ぐらいの大きさの内出血になったが、本当にホっとしたのだ。
一人暮らしはこんな時にヒヤっとする。部屋から落ちた時、ダンボが心配そうに見に来たが、「ダンボ、助けて」と言うと去って行き、私が部屋に上がった時にはヒーターの前でくつろいでいたのだ。
しかし、あんな短い時間によくいろいろなことが考えられたものだ。
人間の脳は、持っている能力のほんのわずかしか使われずにあとは眠っているらしい。だから訓練をして使っていない脳を動かそう、という話をたまに聞くが、例え訓練をしていなかったとしても、こういう時に脳は不意に本来の力を出すのかもしれない。
だって普段2〜3秒では自分の脳みそはあんなに沢山の会話をしない。
私は、転んだ時に一瞬「天才」になったのか・・。
奇跡体験、アンビリーバボー!
今日、部屋から落ちたそのドン臭い人は、その数秒の間世界の誰をも越えた天才になったのであった。