朝。チェックアウトをにしフロントへ降りる。夕べの胡散臭さとはうってかわって今朝のフロントは清楚な女性が2人立っていた。あれは夢だったのかしら・・・?それぐらい雰囲気が一変していた。
ホテルを出るとシャトルバスでまた空港まで連れて行ってもらう。今日は空港からまたシャトルバスで今度は次に訪ねるナイアガラフォールズに移動をするのだ。予約の紙をプリントアウトしたものを運転手さんに見せて、ナイアガラエアバスの発着ポイントで降ろしてもらい、それからツアーカウンターに行ってまた 同じ紙を見せて、今日のシャトルバスを予約した者ですと伝える。
バスを待つ間に海外生活の経験がある幼なじみから偶然メールが来て、英語が全く理解出来ずに苦戦していると送ると度胸と愛嬌があればなんとかなるもんよと返事をもらう。そうだわね。なんとかなるわね!
トロントピアソン空港からナイアガラフォールズまでは移動距離が約125km、一時間半のバスの旅だ。シャトルバスは観光客がよく利用するせいか、今日の運転手さんもお礼を言うと日本語で「ドウイタシマシテ」と返事をしてくれた。
トロントは今朝も天気がよく、それに暖かい。こちらに住む友人からは”4月の下旬でも雪が降って寒いよ”と情報をもらっていたから、イヤーマフラーを持って来た が、今日は半袖で過ごせる日本の今頃の気温と変わらない。
広い高速道路をシャトルバスは行く。
左手に海のように見えるオンタリオ湖が眺められて空の面積が 広くてそれだけで気持ちがおおらかになってくる。琵琶湖の方も好きな景色だったが、走っていると琵琶湖にも思えなくない。他は東名高速道路の由比辺りにも 感じが似ている。
バスは1時間半程走ってナイアガラフォールズに到着した。
乗客の宿泊する各ホテルを順に回って私も今日は泊まるホテルで降ろしてもらい、無事ホテルに到着。今日のホテルは滝が見える部屋を予約してあったので部屋に入るとまず窓の外を見てみる。
実際に訪ねるまではいろんなサイトや写真でここを確認していて、それと同じなのだが肉眼で見ると想像していたよりうんと感動的で壮大な景色だった。
もう少し近くまで行ってみたいなぁ。
ナイアガラフォールズには最近になって市内を走るWEGOという循環バスが走るようになったらしい。パスを買えば乗り降り自由の観光客用の移動手段だそうで、早速ホテルの売店でパスを購入、マップをもらってバスに乗って滝近くまで行ってみることにした。
バスに乗って5分程で滝のすぐの所にやって来た。
ゴーっという滝の音がしてすぐそばをすごい勢いで水が流れてその先に落ちて行く。怖いというより凄いという印象だ。手すりの近くで流れを見ているとミスト状になった川の水が飛んで来る。
自分には何か特別な能力が備わっているわけではないけれど、ここにはなんだかとてもいい「気」が漂っているのだと、自分の本能が語りかけてくる。よくわからないけれど”ここにしばらくいたらいいよ”と本能が教えてくれている気がする。
パワースポットという言葉は聞くけれど、多分ここはパワースポットなんだわと実感する。友人のふじこさん が、私の旅行は病気を治しに行っているような気がすると何度か言ってくれているけれど、本当にそうかもしれないなぁと初めて旅の本当の理由みたいなものについて頭をよぎった。そうだなぁ。本当に病気が治ったらいいなぁと自分でも思う。治るとまでは行かなくても、基本的に身体が少ししんどい状態という日常生活から解放されたらどれだけ嬉しいだろうなぁ。
滝があまりに素晴らしいので更に近寄ってみたくなった。遊覧船で滝のすぐそばまで行けるという「霧の乙女号」に乗りに行く。
チケットを買うと少し坂の道を下ってそこからはエレベーターに乗る。エレベーターで一気に下まで降りるとそこが船の乗り場になる。水に濡れるからというこ とで使い捨て雨合羽を乗船前に受け取ってみんな着用して船に乗り込む。晴れているのにデッキは水浸しになっていて、これは冗談抜きでかなり濡れるんじゃな いだろうかと想像をする。
霧の乙女号、出発。
ナイアガラの滝は2つの滝がメインの滝で、片方がアメリカ滝、もう片方がカナダ滝と呼ばれている。一般によく写真で見るナイアガラの滝はカナダ滝の景色なのだと思うが、まず船はアメリカ滝のそばを通過する。
ザーっ。
水鳥はなんてことなく浮かんだり飛んだりしているが、船にいる私達はプチパニックになっている。雨が降り出したかのように水が上からどんどん降って来るのだ。船のどこに逃げても水から逃れられない。それに急に気温も低くなってかなり寒くなってきた。
アメリカ滝を通過してしばらくしたら更に大きいカナダ滝にいよいよ船は近づいた。
ザザザーーーーー!
目の前は嵐のよう、船が転覆してもおかしくないほど割と荒くれたエリアに突入して、子供たちはよく泣かずに乗っていられるなぁと心配になるくらいだ。
水鳥達はとても元気に飛び回っている。ここで生まれる水鳥は幸せなんじゃないかなぁ。環境がよさそうで、平穏で長生き出来そうなところだ。
霧の乙女号を楽しんで船着場に着くと、どうもエレベーターに故障があったようす。霧の乙女号もそれによって急遽乗船も出来なくなったらしい。
日本人が一人も居ないので、なんとなくの雰囲気で状況を理解しつつ、行動も周りに合わせて自分も待機する。何か急いでいる用事もないからまぁいいか。そし て結局1時間程そこで待機をしてエレベーターも復帰せず、最終的に急な坂を登って帰る人が続出することになった。これはさすがにキツいなぁ。どうしたらい いものかと途方に暮れていたらナイアガラの滝の管理のバスがやってきて、杖を使っている人をピックアップして乗せて上まで連れて行ってもらえたのでとても 助かった。
循環バスに乗ってレストランのある辺りで降りて夕飯を食べた。
ミートボールの入ったパスタ。それにコーラを頼んで2300円程。それにチップが加わる。パスタの茹で加減はやややわらかめ。ミートボールは少し硬かった。
ご飯を食べたあとはちょこっとだけカジノに寄ってみた。20ドルスロットで楽しんだら帰りは380ドルに増えていた。いや、減って380ドルだったのでかなり遊んだと思う。ちょこっとだけのつもりが1時間半ぐらい居たと思う。周りは負けている人ばかりだったし、ハマるといけないので明日はもう来てはいけな いぞ。
夜はカナダに住む友人宅に電話をする。
金曜日から友人宅に泊めてもらうからで、今回の旅は友人夫妻に会いに行くというのが全てのきっかけだったのだ。
「hello」
もしもしと私が言うと日本語に変わる。
カナダ、いいところだわー!
数日後には会って沢山話すことが出来るのに、電話で待ちきれずに話し出す私なのだった。
ホテルの部屋まで滝の音が聞こえてくる。
ゴーっという音が夜に鳴っても遠くでしていた。