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投稿日:2014年11月29日

2014年11月29日

今日は緩和ケアの初診日。

先月末に呼吸器外科の診察を受けた時に、先生から「もう治療はこれ以上は出来ない」ということ、「腫瘍は1ヶ月で大きくなるかもしれないし、先のことはわからない」ということなどを説明され、今から緩和ケアの方にかかって準備を始めるのがいいと言われたのだった。

準備って何のですか。

「肺炎の痕」という見立ては後に胸腺腫だったことがわかり、「これは気になるようだったらちょこっと麻酔してすぐ取れますよ」と言っていた別の腫瘤についても、2ヶ月後には触れる事もなく、もう治療出来ることはなくなったのでと緩和ケアに丸投げされた私としてはずっと腑に落ちないままでいた。

もう病院に行くのはいやだなぁ。

いろいろな不信感で心が何度もつぶれた。

緩和ケアに行ったら今度は何を言われるんだろう。

行くの、やっぱりいやだなぁ。

今朝もドタキャンしようかさんざん迷ったが、真面目な性格のせいかやっぱり行くことにしたのだった。

名前を呼ばれて診察室に入ると先生と看護師さんが座っていた。

どういう経緯でこちらに来る事になりましたか?と、尋ねられたので今年の入院とその後のだいたいの流れを話して、「出来る治療がなくなったということで、こちらを勧められて、それで来ました」と答えた。

すると意外にも「たくさんの科にかかっておられるようですが。科と科の連携は取れていなかったりしませんでしたか?」と先生は言うのだった。

まさに、その通り。

カルテがあっても他の科のことは見ないし、「うちの科」のカルテだけで診察をすることにいろいろな弊害は起き、危険さえ感じたほどだった。

初めてそんなことを理解してもらえたことにまず驚いた。

そして話をしていくうちに、私の感じていた「何か違う・・」という不信感に初めて共感してもらえたと感じたのだった。

一つの科では治療方法がなくなっても、そこが終わりではないということ。

ここから先が実は長い。なるべく共存して元気に過ごせる方法を探す方に目を向けるのが大事だということ。

西洋医学だけが全てではなく、漢方や鍼灸など代替療法も効果を上げているということ。

そして科と科が別々に自分の科のことだけを見て診察をするのはよくないということ。

だから、ここからをまたスタートとして頑張って行きましょう。

これらを先生の口からハッキリ聞いて、正直言って驚いた。

先生は元は外科の先生だったのだそうだ。いろんな科が別々に診察されているところを一つにまとめて全体で見て行こうと言ってもらって、あぁ、私はようやく探していた先生に出会えたのかもしれないなぁと思えたのだった。

最初の入院でお世話になった角田先生。先生が大学病院をやめられてからは、ずっとずっと心細かった。いろんなことがあった。病気になったら一番の鍵はどんな先生に巡り会えるかしかないと思う。患者は病気が治ることはそれは一番の望みだけれど、だけど「この先生に診てもらえてよかった」と思えることが一番の望みと同じ位重要な出来事になるのだ。

「はっきり言って厳しいですね」

「どんどん悪くなっています」

パソコンのカルテを見ながら説明をされてきた。何か悪いことをして判決文を聞くような気分だった。もう少し言葉を選んで欲しいと毅然と言える元気もなく、「はい」と答えるしかなかった。

崖っぷちに立っている人間を、もう後ろから押さないで欲しい。

こんなでも私は毎日が幸せなのだ。

崖っぷちからだって青空が綺麗に見える。

崖っぷちに立てばみんなそこからダイブするわけじゃない。

そういうことを、今私は大事にしたい。

素晴らしい景色はいくつだって見る事が出来るのだ。