みきちゃん、みこかん、みき、みっきん、みっきちゃん、サルみき・・・。
過去、私が呼ばれていた名前はこれだけある。
「サルみき」は高校一年の時についたあだ名だったが、卒業してからも街で大きな声で「お〜い、サルみき〜〜」と、呼びとめられた時はすごく恥ずかしかった。
当時、ヨシオカミキちゃんという女の子と同じクラスだったことから、私は「サルみき」になったのだが、ヨシオカミキちゃんの方は「みきりん」と呼ばれ、だったら「みきちゃん」は空いているじゃないかと今なら主張するが、その頃はそのことに全く気付いていなかった。
”猿の方のみき”でみんなにはわかりやすかったろうが、たまたまその時に私はサルのようなショートカットだっただけなのだ。この時の髪型が今流行の姫系だったとしたら、私は”姫の方のみき”となって「ヒメみき」「みき姫」と呼ばれていたかもしれないのである。
あだ名は時として残酷、しかし確かに特徴を上手く掴んではいるとは思う。が、その場合本人にはあまり有りがたくないことがほとんどじゃないだろうか。
「おっさん」というあだ名の女の子が居た。
「おっさん」は杉本さんと言って、一緒のクラスになった時には既に「おっさん」というあだ名がついていた。
”色黒で少々中年男性のような顔つきだった”ところからそのあだ名はついたのかもしれない。しかし、おとなしいタイプの女の子で性格はおっさんではなかったので、もしかしたら、本人は嫌がっているかもしれないと思い、「おっさん」と呼んでいいのかなと少し躊躇ったこともあったのだ。
「おっさん〜、消しゴム貸してー」
「おっさん、今日はクラブあるの?」
「おっさん」と呼ぶと、「はい、なに」と明るく答えていた。私が知る限り中学高校一貫して、彼女は「おっさん」と呼ばれ続けていたのだ。
「おっさん」は、あれから別の呼び名を得ただろうか。
案外その後もずっと「おっさん」を貫いて、旦那さんからも「おっさん」と、あだ名で呼ばれているかもしれない。
お母さんになっても「おっさん」、おばあちゃんになっても「おっさん」。そして私も「サル」のまま・・・。出世魚みたいに、何か呼び名って変わって行ったりはしないものなのか。
あだ名は意図せず永久に自分の名前として、他人へ刻まれるものなのである。