手術日。
朝、手術着に着替える。昨日麻酔科に行った時にビデオで見た「手術の日の流れ」の通り、時間が来ると看護師さんに付き添われて6階にある手術室へ歩いて行く。今までの手術はストレッチャーに乗せられて運ばれていったので、トコトコ歩いて手術室に行くというのが少し違和感がある。だが、自分が知らなかったというだけで、歩いて行ける患者はこうして歩いて手術室に向かうのが「普通」のようだ。
一見、給食室のようなこの手術部エリア。奥の方に案内をされて扉があくとベッドが置いてあり、「こちらにどうぞ」と言われた。
<はぁ〜っ。今から手術かぁ。>
一瞬ベッドが死刑台に見える。助けてもらうはずの場所なのだが、こんな時には咄嗟に悪いイメージが浮かぶのであった。
ベッドに横になり、左手の甲に点滴の針が刺さる。次に横を向いて背中からまた針を刺されてもう一度仰向けになると軽く手を拘束された。
<やっぱり、手術は怖いな>
そう思ったが、仰向けになって呼吸をし直したらふと恐怖が消えた。何かあたたかい大きな力が自分を守ってくれている。その時私はそんな力を確かに感じていた。
「ではこれから麻酔を入れて行きます」
そう言葉をかけられると、それからすぐに頭が重くなって視界がぼんやりしたなと思ったら意識がなくなっていた。
「吉川さん!」
「吉川さん!」
目が覚めたらしんどかった。喉に入っている呼吸器の管が苦しかったが、これはすぐに取ってもらえたのでだいぶ楽になった。
「終わりましたよ」
<え?そうなの?>
手術、終わったんだ・・・。
ここはICU。手術が終わった患者さんが入る場所で、一日中機械のピッピッという音が鳴っている、ちょっとものものしい場所。手術が終わりここに運ばれて来たらしいのだった。
しんどい。
でも、終わったんだ。
今日は筋無力症の呼吸困難が合併症で出るリスクがあるらしい。酸素マスクとおしっこの管がついていて、点滴の針は麻酔で眠っている間に更に2つ増えていた。
手術は終わったが、意識が戻ってからは継続して痛くてしんどい。身体に負荷がかかって生命力が下がっている感じがする。背中の管から入る痛み止めと筋肉注射の痛み止めを打ってもらい、<ここからは少しずつよくなるんだ>ということを繰り返し頭の中でつぶやきながら過ごした。
丸一日、眠れなかった。
でも、終わったよ。
だから頑張って耐えて乗り切ろう。
手術って手術後がそういえばすごくしんどかったなぁと昔のことを思い出しながら横たわっていた。