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投稿日:2011年03月10日

2011年03月10日

バスで座っていたら小さいおばあちゃんが前に立った。
「どうぞ」
席を立とうとしたら、すぐに降りるからということと「それより、声をかけてもらえて嬉しかったわ。ありがとう」と遠慮をされた。
だがおばあちゃんの言った「すぐ降りる」バス停は次の停留所ではなかった。
そして次の次のバス停でもなく、結局その次のバス停で私も一緒に降りることになった。
ちょっと罪悪感がよぎった。だったらやっぱり席を代われば良かった。というのも、私とおばあちゃんの会話に気づかなかったとなりの老婦人がしばらくしておばあちゃんが立っていることに気づき席を立ち、だがおばあちゃんが座らないので、結構混んだバスだったにもかかわらず隣りの席がポツンと空いていて、妙な空気が漂っていたのだった。
だが、おばあちゃんは「ありがとうね」と再度私に声をかけてくれた。私が立つと思っていたより小さくて弱々しい感じがした。なのでやっぱりまた胸がチクリと痛み、ならばせめて方向が同じならその間が私が護衛をしようと横について一緒に歩くことにしたのだった。
「どちらまで行かれるんですか」
「駅までよ」
「あ、じゃぁ一緒だ」
駅まで数分、じゃあ駅までは一緒に歩こう。
そう思ったのだったが・・・・。
少し一緒に歩いていると、おばあちゃんがすまなそうに私に切り出した。
「あのぅ」
「私ね」
「ちょっと急いでいるんで」
「先に行ってもいいですか」
<ええっ?>
まさかそんなことを切り出されるとは思いもせず・・・・。
咄嗟に「はい、もちろん」と答えたものの・・・・。
するとおばあちゃんは小走りで掛けて行ってしまった。私を悪人だと思って逃げたのではないと思うが、私と一緒に歩くと遅くなってしまうと判断されたのである。
おばあちゃんはそのまま走って角を曲がって見えなくなった。
私が角を曲がった時には、向こうの角も曲がったあとだったらしく、姿は見えなくなっていた。
<気がきかなくてごめん>
そう思ったが、ひ弱な小さいおばあちゃんに最後に振り返って「ごめんね」と言われたことが何よりもショックだった。
<一緒に歩けなくてごめんね>
・・・・・・ってこと???
おばあちゃんからしたら、私の方がひ弱に見えたのでしょうか。
むむむむむー。
おばあちゃん、あなた何者・・・・・?
あのひとはきっと今頃家に帰って、「ひ弱なおばあちゃんの着ぐるみ」を脱いでムキムキマンに戻っているのである。