余震がまだ続いているというのに、今朝は近所でユンボを使って何か取り壊し作業をしているみたいなのだ。
近くでこの作業をやっていると家が地震と同じように揺れる。
ガタガタガタガタ・・・・。
作業をしている人達の威勢のいい声が聞こえてくるが、その明るい声がなんだか無性に神経を逆なでする。
今日この作業はちょっといくらなんでも早いんじゃないの。
文句を言いに行こうかと思ったが、これも仕事だと思うとそこまでの勇気が出ずに、かといって家に居てこの揺れを我慢するのも気分がいいものじゃない。取りあえず家を出て用事を済ませるという消極的な対処で一時的に避難することにしたのだった。
しばらくして家に戻って来ると、隣りの家に様子を伺うようにして立っている男性が居る。来客かなと思っていたら男性は私に気づいて話しかけてきた。
「あのぉ・・・」
「裏で作業をしている建設会社の担当の者なんですけど」
「うちにお電話された方でしょうか」
そうか、私はどこに電話をしたらいいのかわからなかったのだが、多分この辺の住民の誰かが苦情の電話を入れたんだろう。さっきまで派手に暴れていたユンボが止み静かな昼間に戻っていた。
「いいえ」
電話をしたのが私じゃないとわかって、男性は急にホっとしたような顔で近づいて来た。
「いやぁ、ユンボを使って作業していたんですけど、地震の影響でこの辺の人達がどうもナーバスになっているみたいで」
一気にカチンと来た。
私は男性寄りの立ち位置ではない。お宅の言うナーバスな住民の一人なのである。だから同意なんて出来る訳もなく、そうしたら瞬時に”一言刺しておこう”とモードになっていた。
「私のうちもすごく揺れていますよ。怖いですよ。私も。」
冷たい声で思い切り睨んで言ってから家に入ったのだ。仕事だと言うのなら仕事が出来るように、どう進めたらいいかを考えるのも仕事だろう。責任者がそんななら私は同情もしない。少なくとも今日このタイミングでユンボはやめていただきたいのである。
その後、この辺りは静かになった。
余震は続いている。
足元が安定しないと自分がめまいを起こしているのか、船酔いなのかという感覚がして気分が悪い。
地面は基本的に揺れないということを前提に暮らしていた。
平和の条件の一つだったのだと思ったのだった。