10時にフロントに集合をして、船が錨を下ろしているパラオパシフィックリゾートへ車で向かう。
今日はくもり。
パラオと言えば、青い空と青い海の写真しか見たことがなかった。が、途中海を渡る橋にさしかかった時の景色は、曇った日の琵琶湖に似ていてビックリした。晴れたら琵琶湖の空は薄い青空が印象深く、せっかくだから日本では見ないような空と海の色が見たかったのだが、パラオだって天気が悪い日もあるんだということを知った。
今日から乗船する飛鳥Ⅱは岸にはなく、少し沖の方に泊まっていた。
「おぉおっ、アレに乗るんですか!」
飛鳥Ⅱとパシフィックリゾートの桟橋間は、小型のボートで行き来するらしい。 オプショナルツアーに出掛けるお客さん達が飛鳥Ⅱ側からボートで来られ、反対にバラバラっと雨が降り出した中、桟橋から飛鳥Ⅱに向かうボートに私達は乗り込んだ。
前に横浜港に泊まっているのを見て、乗ってみたいなぁと憧れていた客船。
それからたまに飛鳥のサイトを訪れて眺めていたが、お金持ちじゃないと乗れないという諦めは思わぬ形で叶うこととなった。
立派なホテルのような内観。
船内でチェックインを済ませ、そのあと出航するまではパラオに戻って自由行動が出来るということだったが、天気が悪かったので出掛けるのはやめた。各自部屋に荷物を置いて一息ついたら、飛鳥のお仕事に携わってもう長いN氏に船内の施設を案内してもらう。
ここ、本当に船の中?
図書室にブティック、チェスや囲碁が出来る部屋もあるし、映画館もある。施設がいろいろあり過ぎてとても一度じゃ覚えられない。
夕方、出航をしたらさすがに船の揺れを感じてここが海の上だとわかった。
ここでの食事はコースやビュッフェ、朝から晩まで何かしらが食べられてしかも有料なのはアルコール類ぐらいなので、お酒を飲まない私はお財布を持たずに好きなだけ食べたい物を食べたいだけ食べられる。
公演のリハや本番以外、自分に課せられた用は何もない。
”何して、過ごそう・・・”
普段は携帯にさほど縛られていない生活を送っていると思っていた。
だが、なんだかちょっぴり心細い。
だって昨日成田を出発してから、ネットに繋がらなくなっているのだ。パラオまでは繋がる生活を続けられるというつもりで来たので、予定が変わって”繋がらないこと”がものすごく不便なことのように思えてきたのだった。このままオーストラリアを下船する日まで、ネットに繋がらない生活を10日も過ごすだなんて、信じられない。
と。
ふと見回せば。
だーれも携帯を使っていない。
使えないことに不安がってもいない。
船のお客さんはみんな表情が穏やか。変な威圧感やギラギラオーラがないのが、共通した空気だ。
携帯なんて捨ててしまえ!
本物の贅沢は携帯を捨てることから始まるんではないのか!
携帯という安心おしゃぶりから離脱して大人のお金持ち婦人になるのよ。ワタシ!
取り敢えずいつもの早食いの癖はなんとかせねば。
ゆったりね。
ゆっくりね。
”いらち”厳禁。
やで。
ほんま。
そうね。せっかくこうして機会をもらえたんだから、「食べる」「寝る」「ぼーっとする」以外の何にもしない贅沢を満喫したいのだ。