夜、ふと沈丁花の香りがするのに気がついた。
今日は朝から外に出ていて、外気に触れる機会は多かったのだが、ついさっきまではこの香りはしなかった。
どこに咲いているんだろう。
探してみたけれど姿を見つけることは出来なかった。
沈丁花は姿はそんなに美しい花じゃない。どちらかと言えば地味でヤボったい感じがする部類の花。だがその香りはとても優雅で魅惑的だ。
姿が見えなくても香りで、その花があるのがわかる。
まるで空気に漂うように。
沈丁花は空気に咲く花。
そっと夜にやってきた。
沈丁花が咲けば、それは春のしるし。
春は毎年香りからやって来るのだ。