今の家はどの駅からも遠い所にあるので、買い物をする場所も分散している。面倒な点が多いが、よかったこととしては、数軒のお気に入りのパン屋さんから店を選べるようになったことなのだ。
クリームドーナツなら阿佐ヶ谷駅構内のエディ、マフィンだったらパール商店街の中の店が一押し、五日市街道の好味屋では犬用クッキーが買えるし、浜田山西友の中のパン屋さんはロールパンがすごく美味しい。その店でしか味わえないパンがあって、他にもこのパン屋さんだったらコレを買って帰ろうというのが決ってきたので、今の暮らしは基本的に不便だが店を何軒か持つ豊かさが出来たのだ。
それにしても、出る方角によって店の中の客層はずいぶん変わる。
阿佐ヶ谷は何故か”50〜60代位のおばちゃん”が多い。気がする。「今日の夕飯」の買い物をするなら私も阿佐ヶ谷だと思う。それほどスーパーも八百屋さんも競合店がひしめきあっている。和菓子屋さんも5〜6軒はあるし、美味しい豆腐やうなぎもここで手に入る。だから50〜60代のおかん達がこの辺をサメのように泳いでいるのだ。
ところが浜田山方面に行くと”おかん”は消える。かわりに小さな子供を連れたお洒落ママ達が今度はいきなり増えるのだ。ママ達はその後20〜30年経っても”おかん”にならないであろう。子供もちょっと”いい服”を着ている。明らかに買い物客のタイプが違っているのだ。
しかし、陸続きなのに。
どこで人が変わるのだろう。
今日は以前から入ってみたかった住宅街の中にある”南フランス風”の小さなパン屋さんに入ってみた。すると、狭い店内は子連れのママ達で溢れていた。こんなに狭いのに、誰も押したりぶつかったりせず譲り合う余裕まであるお客さん達・・・。
”この人達は一体どこに住んでいるの・・・”
何げなく入った店内でかつてない程わんさかお洒落ママ達に遭遇をし、より一層客層エリアマップの境界線の位置がわからなくなったのだ。
どこに買い物に出ても、自分が溶けていない感じはある。
新しいパン屋さんの味を味わうより、今日は先に自分が庶民であることを味わったのであった。