夜、先日行って気に入った高円寺のカフェにまた行ってみた。
店の前には草木が可愛いらしく植えてあって、古い家に手を加えてあるその具合いが私好みで、アンデルセンやグリム童話に出て来る「森の中の小さなお家」のイメージにぴったりのお店なのだ。
しかし前回は店内におしゃべり魔女が居て、目の前に座る彼氏だか男友だちだかにずーーーーっと、「わたしってこういうヒトなの」持論を語っているのがこっちにも筒抜けで、非常にくたびれた。言葉も花粉と一緒で、ある一定の量を越えると体に支障をきたす。頭の中にハチがブーンと飛んでいるような妙な具合いの悪さに襲われて、それで店を出たのだった。
せっかく可愛いお店だったのに。
今日はさすがにあの人は居ないだろう。
仕切り直して出掛けて行ったのだ。
ここのお店はちょっとだけ恥ずかしい気分になることがある。それは店内が狭く一階と二階の行き来が大変だからなのだろうが、お客自身が客席中央の柱についているインターフォンの所まで行って、ピンポンを押してオーダーを言うという点なのだ。
普通の民家のインターフォンと同じものをピンポーンと押して、「アイスコーヒーをひとつ」と言う。インターフォンから聞こえてくる声は小さいので、こっちの声だけがヤケに店内に響く。注文をする時って目立つのだ。
今日私が座った席は、このインターフォンのすぐそばだった。
「あの・・・」
という声がしたので「はい?」と言って振り返ると、その人はインターフォンに向かって注文をするところだった。
「ドリアと、食後にアイスコーヒーをお願いします」
と、言う声がハッキリ聞こえて来て、見ず知らずの人がこれからドリアを食べようとしていて、それからアイスコーヒーを飲むんだなという余計なことが頭に浮かんだりする。
前回とはまた違う落ち着かない回となっていたのであった。
今日は私が食事をしている間じゅう、隣りの席の彼氏の方が、「オレ、蝶々ダメなんだよねー」と、蝶々のどこが気持ちが悪いかを語っていた。
それはそれで私も気持ちが悪くなった。
森の中の可愛いお店は一人で行くと、気が散る傾向にある。
しかしながら、高円寺在住の友人でこのテイストのお店に誘える人がいない。高円寺在住の私の友人は、みなカフェではなく焼き鳥が似合うメンツばかりであることが判明したのであった。