私の家の辺りは袋小路ですぐが行き止まりになっているので、家の前を通る人は限られているのだ。
宅配の業者さん、郵便局員さん、電気やガスのメーターのチェックに来る人、新聞配達の人・・・。ダンボにとってはこれら仕事で来る人はもちろん、先住のご近所さんも悪人。もっと残念なのは私も一歩家を出たら極悪人になることなのだった。
「ダンボ、私だよ」
多分私だと認識しているはずなのに、牙ムキだしの恐ろしい形相で激高して吠える。敷地内でガラス越しに部屋を覗いていて犬に激しく吠えられている図は、侵入者に対する威嚇そのもので、ちょびっと寂しい。
とにかく誰が前を通っても、ダンボにとっては悪に相当するみたいなのだった。
「ダンボっ、シ〜っ」
たいていはこんな風に注意をする。
が、たまに<いいよ。吠えなさい>と黙認することがある。それはチラシをポストに入れに来る人の時なのだ。
私の家のポストにも2日に一度は何かしらのチラシが入っている。偶然外に出た時にチラシをポストに入れている人に会うことがあるのだが、そんな時にはたいてい私の家のポストにはチラシを入れずに立ち去ってしまう。
勝手にチラシをポストに入れることが、少しうしろめたい行為なのかもしれないなぁ・・と思ったりもするのだが、「ムムム・・・」と思うのはそうではない時のことなのだった。
私の部屋からはカーテン越しに通りの人が見える。誰かに見られているということに気がついていない時に、ポストにチラシを入れた後で辺りの家の様子を伺っているのを目撃したことが度々あるのだ。
<なんでポスト以外の所を覗いているの。>
部屋の中からそぉ〜っと、私も覗く。
私も挙動不審だが、私から見たらやっぱり挙動不審。
少なくともウチには体に比べたら怖い声が出る犬が居る。
<吠えていいんだよ>
<早く>
<いっぱい吠えなさい>
「不審に見える」のは一体どういう点がボーダーラインになるんだろうか。
私も先日、バイクに乗っている所を「バイクひったくり犯」の職務質問を受けたところなのである。