外来日。
病院内を歩いていると、頭上で「ウィーン」「ガチャン」という音がした。
院内の天井にはレールがついていて、ミニモノレールのような自動運搬機が行き来をしている。このミニモノレールはカルテなどを運んでいて、モノレールの小型版そのものなのだ。途中方向転換も一人でしながらゆっくりと進んで行く。「賢いなぁ」と感心しつつも、いつも病院内に入った時はモノレールの存在を忘れているので、毎度頭上で「ガチャン」と音がして首をすくめているのだった。
「しゅっぱーつ」
「しんこう」
病院内も忙しく人が動いているが、天井の世界も忙しい。速度はゆっくりでありながらもあちこちで移動している所を見掛ける。いっぱい仕事が詰まっているのだろう。
「ガチャン」「ウィーン」「ゴトゴト」
あら。
モノレールの中で、私のカルテが廊下を歩く私の姿を見つけた。
<急に音がしたんで、首をすくめてビックリしてるわ。>
「あれがね、私なんですよ」
隣りの席に座っていたおばあちゃんに話し掛ける。
「私はもう待ち合い室に着いているみたいだわね」
おばあちゃんカルテはモノレールの進む先の方に目をやって今度はおばあちゃんを発見、私の方を見て笑った。
モノレール、駅に到着。
じゃ、また。
お元気でね、ごきげんよう。
今日も病院にはたくさんの患者さん。
<あそこのベンチが空いているわ>
「ここ、よろしいでしょうか」
「えぇ、どうぞ」
あれ、どこかで会ったことがあったような気がしたけれど。
きっと気のせいね。
笑顔で返事をくれたおばあちゃんの横に、私は腰を掛けたのだった。